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相続

【相続対策事例21】兄弟で共有名義にしたことで、売却できなくなった

〈事 例〉

父親(80歳)の遺産である自宅と別荘の土地と建物を、長男と次男が2分の1ずつ共有で相続しました。

土地の名義を長男が1/2、次男が1/2、同様に建物の名義も長男が1/2、次男が1/2にしたということです。

当初は「兄弟だから特に問題はない」と考えていましたが、数年後、長男が別荘を売却したいと考えるようになりました。

長男は、まだしばらくかかる子どもの教育資金と自身の老後生活資金を確保したいという想いがありました。

ところが、次男は売却に反対しました。

別荘の土地、建物とも所有権の1/2は次男にあります。

長男はサラリーマンですが、次男は会社経営をしており、会社の業績も順調で、長男ほど資金繰りに困っていませんでした。

兄弟で話し合いを行いましたが合意が得られず、別荘の土地も建物も処分できなくなってしまいました。

〈対 策〉

✅父親の生前に、自宅と別荘を相続により引き継いだ後の利用方法について、長男および次男それぞれの希望を確認し、共有名義を避ける方向で遺産分割方法を検討する

例えば、長男が自宅を相続し、次男は別荘と預貯金とその他の資産を相続し、不足する分については、長男から生命保険金を活用した代償金の交付を受ける など

✅家族間で話し合った遺産分割方法を遺言書に書いておく

〈ポイント解説〉

不動産の共有名義は、相続時には公平に見えても、将来の売却・管理・修繕などで問題になる可能性がとても高いです。

そのため不動産の共有名義は、極力さけなければなりません。

今はどんなに仲の良い兄弟であっても、将来のことはわかりません。

不動産を売却できるのであれば売却資金を1/2ずつ分けることができますが、そう簡単にはいきません。

相続において不動産はいつも問題児です。

そのため、不動産は誰が引き継ぐのかをあらかじめ決めておくことが円満な相続には必要となります。

不動産以外の預貯金や他の財産を相続させることに併せて、生命保険金を活用した代償分割を行い、兄弟でもめない相続のかたちについて、家族間でしっかりと話し合っておくことが大切です。

なお、生命保険金は受取人固有の財産です。

生命保険金の受取人を誰にするかについては注意が必要です。

そして、家族間で合意形成した内容について遺言書にのこすことで、多くの場合トラブルを防ぐことができます。

2026.9.18.

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相続相談の現場から

遺言書は書くべき

遺言書は全員に書いてほしい

遺言書があれば遺言書にしたがって遺産分割が行われます。

そのため争い事を防ぐのに大きな効果があります。

一方で、遺言書がなかったら、相続人全員で遺産の分割方法を決めなければなりません。

決まらなければ家庭裁判所での調停へと進みます。

今はどんなに仲が良い兄弟姉妹でも将来のことはわかりません。

自分の遺産相続で家族がもめないようにするためには遺言書が必要です。

外国では遺言書を書くことは一般的ですが、日本では遺言書を書く人はまだまだ少ないです。

遺言書は全員に書いてほしいです。

「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」が代表的

遺言書の代表的なものとして「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つがあります。

公正証書遺言は、公証役場で法律にくわしい公証人に作成してもらいます。

自筆証書遺言は、いつでも自分ひとりで作成することができます。

それぞれに長所・短所があるので、どちらで作成する方がよいのか見極める必要があります。

国も遺言書を作成しやすくするために改定を行っています。

公正証書遺言では、公正証書のデジタル化により、公証人との面談は必要ですが、条件が整えば公証役場まで行かなくてもオンラインで完結できるようになりました。

自筆証書遺言では、2020年7月から法務局による「自筆証書遺言保管制度」が実施されています。

この制度を利用すれば、それまで自筆証書遺言書の懸念事項となっていた遺言書の偽造や紛失を防止することができ、家庭裁判所での検認を不要とすることもできます。

遺言の内容が複雑でトラブルを引き起こす心配があるのであれば、時間や手間、費用もかかりますが、公正証書遺言で作成するべきでしょう。

特に遺言書を書いた方がいい人

次のような人にはぜひ遺言書を書いてほしいです。

①財産が少ない人

兄弟姉妹間の感情のずれ、意地の張り合い、不満、恨み、妬みなどが争いごとのきっかけになります。

相続争いは、遺産総額が5,000万円以下のケースが全体の約80%を占めます。

財産が多い人は、もめることがわかっているので、あらかじめ対策をしています。

「大した財産はないから、わが家は大丈夫」と思っている人こそ、何の対策もしていないためもめてしまいます。

②家族仲が良い人

今は兄弟姉妹の仲が良くても、それぞれに家庭ができると血縁関係がうすくなっていき、気まずくなっていくことがあります。

源 頼朝と源 義経のように将来のことはわかりません。

③子どもがいない人

子どもがいない夫婦の場合、夫の相続人は妻と兄弟姉妹であることが多いようです。

兄弟姉妹との仲があまりよくなく、自分の財産はすべて妻にあげたいと思うことがあります。

そのような場合には、兄弟姉妹には遺留分(法律上、最低限相続できる相続分)がないため、遺言書で「すべての財産を妻に相続させる」と書けば想いを実現することができます。

④心配事がある人

障がいをお持ちの子がいるなど将来の行く末に心配な家族がいる場合、その人の生活を守るために遺言書は非常に効果的です。

⑤海外に子がいる人

最近は生活の拠点を海外に置く人が増えてきました。

例えば、遺産分割協議書を作成する場合、相続人が海外に住んでいると、書類の取り寄せなどに時間や手間がかかることが考えられます。

⑥相続人がいない人

相続人がいない人の財産は、何もしなければ国庫に帰属します。

財産は誰にでも引き継ぐことができます。

お世話になった人や寄付したい団体などがあれば、遺言書を書いて自分の想いを成就させることができます。

遺言書を書く際には「遺留分」に注意

遺留分とは、一定の相続人が最低限相続できる相続分のことで、民法に定められています。

遺言書があれば、そこに書かれた分け方が優先しますので、一人に全財産を相続させるなどの内容では他の相続人は納得しません。

そのため遺留分の権利が保証されているのです。

ただ、遺留分の権利は、配偶者、子、父母にはありますが、兄弟姉妹にはありません。

そして遺留分の割合は、原則として法定相続分の半分ですが、相続人が父母のみの場合には法定相続分の1/3です。

もし遺言書で遺留分が侵害されているのであれば、奪われた相続分を取り戻すことができます。

このように遺留分は相続人にとって最低限の保障であり、強力な権利です。

ただし、遺留分の行使(遺留分侵害額請求)には期間制限があります。

次の期間を経過すると権利が時効となるので注意が必要です。

✅ 相続開始および遺留分侵害を知った日から1年経過

✅ 相続開始の時から10年経過

遺言書を書く際には遺留分には十分に注意することが大切です。

2026.9.11.

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相続

【相続対策事例20】空き家になった実家を相続することになった

〈事 例〉

実家で一人暮らしの母親(84歳)が亡くなり、子ども2人(長男・次男)が実家を相続することになりました。

長男は実家の近くに一軒家を建てて家族と暮らしており、次男は東京のマンションで家族と暮らしていました。

そのため誰も実家を引き継いで住む予定がなく、そのままにしていると空き家にもかかわらず固定資産税や管理費、修繕費などの負担が発生することになってしまいます。

とはいえ実家にはたくさんの思い出があり、長男、次男とも実家を売却することには抵抗がありました。

ただ、いつまでもそのままにしておくわけにはいきません。

空き家になった実家の引継ぎ方について、兄弟で頭を悩ませていました。

〈対 策〉

✅ 母親の相続発生前から、実家を「誰が引き継ぐのか」「売却するのか」「賃貸するのか」を家族で話し合う

✅ 最終的には売却することを前提として、家財整理や不動産の査定などを早めに進めておく

〈ポイント解説〉

「思い出があるから」という気持ちはわかります。

しかし、そのような理由だけで実家を残してしまうと、引き継いだ相続人が大きな負担を背負うことになります。

・誰も住んでいないのに管理費だけがかかってしまう

・管理ができていないと近隣から苦情が来る

・固定資産税も払い続けなければならない

「空き家問題」は今後ますます増え、深刻化していくことが予想されます。

空き家になってしまった実家をどうするかについて、親が元気なうちに家族全員が集まって話し合っておくことが円満な相続のために必要です。

空き家問題を解決するための最適な方法は「売却する」ことではないでしょうか。

そのためには親が生きているうちから家財整理や不動産の査定などを早めに進めておきましょう。

国土交通省では、空き家やその敷地を売る・貸す際に活用できる制度をとりまとめて、ホームページで紹介していますので参考にしてください。

【空き家・敷地を売る】

●空き家の発生を抑制するための特例措置により、2027年12月31日までに一定の条件の下で売却すれば、所得税・住民税において譲渡所得から3,000万円まで控除されます。

【空き家を売る】

●インスペクション(専門家による空き家の建物現況調査)をしておく

【空き家を売る・貸す】

●空き家バンクを活用する

【空き家を貸す】

●住宅セーフティネット制度を活用する

●非営利法人へ貸す

●サブリース事業者へ貸す

【空き家になる前に売る】

●住み続けながら将来の処分を考える(リバースモーゲージ)


出典:国土交通省 アキヤリバース

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/articles/2024032003.html

2026.9.4.

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相続

【相続対策事例19】長男が自宅を相続したが、他の相続人への代償金が払えない

〈事 例〉

父親(81歳)が亡くなりました。

相続人は長男・次男の2人でした。

父親の財産は3,000万円の自宅と1,000万円の預貯金でした。

長男は父親とずっと同居して生活してきており、「自宅は自分が相続したい」と考えていました。

相続人は子2人なので、法定相続分としては1/2ずつとなります。

そのため、長男が自宅を相続すると、次男との間で遺産の分け方に大きな差が生じてしまいます。

父親は財産の分け方について子どもたちと特に話をしていませんでした。

また、遺言書も書いていませんでした。

〈対 策〉

✅父親の生前に財産全体を整理したうえで、生命保険を活用して、長男から次男へ
 代償金が支払えるように準備しておく

✅遺産の分け方について、父親は遺言書を書いておく

〈ポイント解説〉

相続でまず確認すること

相続対策の第一歩として、「相続人は誰なのか?」「相続財産には何があるのか?」「遺言書はあるのか?」をまずは確認します。

戸籍を確認してみたら「実は相続人は別にまだいた」ということは珍しいことではありません。

また、相続財産はプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も把握する必要があります。

「うちは大した財産はないから」と思っていても、全財産を把握することは、なかなか大変なものです。

相続人や相続財産を正確に把握できなければ、円満な相続はできません。

不動産は「分けにくい」から悩ましい

このケースのように、一般的な家庭では、相続財産は自宅と預貯金ということが多いです。

悩ましいのは、不動産は「分けにくい」という特徴があることです。

不動産を売却して、その売却資金で遺産分割を行うことができればよいのですが、簡単に売却することはできません。

ではどうしたらよいのでしょうか?

不動産だけでなく、預貯金や生命保険なども含めて遺産分割を考えます。

●生命保険金を使った代償分割

生命保険金を活用した代償分割を行うという方法があります。

ただし、生命保険金は原則として受取人固有の財産であることに注意が必要です。

受取人固有の財産ということは相続財産ではないということです。

そのため遺留分(最低限相続できる相続分)を考える際には、生命保険金を除外して考えなければなりません。

では具体的にはどのようにすればよいのでしょうか?

このケースの場合には、長男がいったん全ての財産と生命保険金を受取り、そこから代償金を長男から次男へ支払うようにします。

トラブルを避けるためには、生命保険金の受取人を次男とはしないことがポイントです。

生命保険金は受取人の固有財産であるため、次男は生命保険金を除いて、自分の適正な相続分を主張してくるからです。

●円満相続のために

父親は、遺産の分割について、遺言書にきちんと書いておくことが大切です。

ただし、遺言書を一人で書いておけばそれで安心ということにはなりません。

遺言書を書く前に、長男と次男を交えて、遺産の分け方について家族会議を実施し、家族間の合意形成を図っておくことでトラブルを避けることができます。

2026.8.28.

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相続

【相続対策事例18】成年後見制度を利用したが、財産が自由に使えなかった

〈状況〉

Nさん(78歳)は認知症と診断され、医師のすすめにより成年後見制度を利用することにしました。

成年後見制度とは、認知症などにより判断能力が衰えた人や知的障がいのある人などの財産を管理し、契約など法的な面から日常生活を守る制度です。

成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。

法定後見制度は、すでに判断能力が不十分な人のための制度です。

一方で任意後見制度は、まだ判断能力のあるうちに、将来に判断能力が衰えたときに備えて、自分を守ってもらう契約を結んでおく制度です。

任意後見制度は、「誰に、どのようなことを頼むか」という内容を前もって決めておいて、実際に判断能力が不十分になったときに、契約がスタートします。

Nさんの場合は、すでに判断能力が不十分であると診断されていたため、法定後見制度を利用することになりました。

成年後見制度では一般的に、守る立場の人を「後見人」といい、守られる立場の人を「被後見人」といいます。

なお、法定後見制度では、被後見人の判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の3つの分類があります。

後見人は被後見人の利益を守ることが最優先となります。

Nさんの場合

・孫への教育資金援助

・相続税対策のための生前贈与

・アパート建築

・資産運用

などが認められませんでした。

〈問題点〉

●柔軟な相続対策ができない

●資産活用が制限される

法定後見制度では、後見人に「代理権」「同意見」「取消権」などの権限が与えられています。

後見人の立場が「後見」「保佐」「補助」のいずれに該当するかによって、後見人の権限が代理なのか同意なのか、また代理や同意によってできる範囲が異なります。

また、法定後見制度は家庭裁判所の審判によって利用するため、家庭裁判所への申立費用と後見人に対する報酬の支払いが生じます。

〈対策〉

✅ 家族信託

✅ 任意後見契約

✅ 遺言書

認知症になる前に、例えばこれらを組み合わせて準備しておくことで、多くの問題を回避することができたと考えられます。

認知症対策は介護だけでなく、「相続対策」としても重要です。

認知症になると、本人の財産であっても自由に管理・処分できなくなるケースがあります。

その結果、預金の払い戻し、不動産の売却、生前贈与、遺言書の作成などが難しくなり、家族が思わぬ負担を抱えることも少なくありません。

だからこそ、判断能力が十分にあるうちに準備を始めることが大切です。

家族信託、任意後見契約、遺言書、生命保険などを適切に組み合わせることで、将来の不安を大きく軽減できます。

相続対策は「亡くなる前の対策」だけではありません。

「認知症になる前の対策」でもあることを、ぜひ覚えておいていただきたいと思います。

〈注〉
この記事は2026年8月時点の情報にもとづき作成しており、成年後見制度については、2028年頃の実施を目指して、さらに利用しやすくなるような改正が行われることが確定しています。

 現行制度改正後
利用期間被後見人が亡くなるまで必要な期間だけ
報酬の支払い一生涯(毎月)必要な期間だけ
後見人一度決まれば交代は困難最適な人に交代可
本人の意思後見人が代行して決める後見人が支える

2026.8.21.

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相続相談の現場から

相続対策と相続税対策は別物

相続対策とは? 相続税対策とは?

相続セミナーに参加していただいた方と話していると、相続対策とは節税対策と考えている方がとても多いことを感じます。

相続対策=相続税対策というイメージです。

しかし相続対策と相続税対策は別物です。

相続対策を考えるときには、税金のことだけでなく、相続全体で考えなければなりません。

つまり、相続対策=相続税対策+遺産分割対策+流動性資金対策となります。

相続税対策は相続対策の一部なのです。

このことを理解していない方がとても多いので、セミナーでしっかりとお話するようにしています。

さらに言えば、ここ最近では4つめの相続対策として「認知症対策」がとても重要視されています。

相続税がかかってくる人は確かに増えた

もうひとつ、相続セミナーに参加していただいた方と話していて感じるのは、「相続税の税制が変わって、相続税がかかってくる人が増えたんだよね」と認識されている方が多いことです。

確かにそのとおりです。

もう10年も前になりますが、2015年から相続税を計算する際の基礎控除額が40%引き下げられました。

改正前には相続税が課税される人の割合は、亡くなった人の約22人に1人でした。

ところが2024年には約10人に1人となり、東京都内であれば約3人に1人は相続税が課税されていると言われています。

地価の上昇もあり、東京都内に住んでいると、相続税の課税対象になる人が多いのでしょう。

一般的な家庭では相続税はかからない

相続税の計算においては、いくつかの特例があり、特例を適用することで節税できることができます。

具体的には「配偶者の税額軽減の特例」「小規模宅地等の評価減の特例」などです。

遺産総額が1億円以下の一般的な家庭では、特例を適用すれば、相続税をゼロにできるケースも多いです。

遺産分割や二次相続の問題はありますが、配偶者の税額軽減の特例を適用すると、配偶者が受け取る財産が1億6,000万円以下であれば配偶者には相続税はかかりません。

財産は夫婦で築いてきたものだから、ということなのでしょう。

それにしてもすごい特例ですよね。

遺産分割事件の約80%は遺産価額5,000万円以下で起きている

相続対策でもうひとつ知っておいていただきたいことがあります。

2025年に最高裁判所がまとめた「遺産価額別 遺産分割事件の件数」によれば、遺産分割事件の約80%は遺産価額5,000万円以下で起きているとのことです。

約5件に4件の割合です。

さらには遺産価額1,000万円以下のケースが約35%を占めており、約3件に1件ということになります。

一方で遺産価額1億円超の割合はどうだったかというと、全体の約7%でした。

相続財産が多いからもめるのではなく、少ないからもめることがわかります。

なぜでしょう?

相続財産が多い家庭はもめることがわかっているので、あらかじめ相続対策を行っています。

逆に「わが家はそれほど財産もないし、子どもたちも仲が良いからもめないだろう」という家庭では相続対策を行いません。

そのため「わが家は大丈夫」と思っている家庭こそが危ないのです。

今は仲が良くても、将来のことはわかりません。

源 頼朝と源 義経のようにならないためにも、遺言書を書いておくとか生前にできることはやっておくことが大切です。

2026.8.7.

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相続

【相続対策事例17】相続税対策が途中で止まってしまった

〈状 況〉

Mさん(80歳)は総額3億円ほどの資産を保有していました。

不動産が中心でしたが、預貯金や株式などの金融資産も多く保有していました。

80歳を過ぎ、そろそろ相続について考えなければと思っていました。

資産総額は3億円、配偶者は5年前に亡くなりましたが、子どもが5人おり、節税や遺産分割で悩みました。

知り合いの税理士に相談したところ、生前贈与をすすめられました。

5人の子どもたちにはそれぞれ子どもがおり、子だけでなく孫にも生前贈与することにしました。

子や孫に毎年生前贈与を行っていけば、相続財産を着実に減らすことができ、節税になると考えました。

税理士に相談しながら、計画的に生前贈与を進めることにしました。

ところがMさんには数年前から物忘れの症状がありました。

年齢のせいだとあまり気にせずにいましたが、ここ最近は特に物忘れの症状がひどくなり、今日が何月何日なのか、自分はなぜここにいるのか、わからなくなることが多々ありました。

病院で検査を受けた結果、認知症と診断され、残念なことに認知症の症状が大分進行していました。

意思能力の低下により、贈与契約書の作成は困難と判断されてしまいました。

生前贈与を行うことができず、また円満な遺産分割のための遺言書を作成することもできませんでした。

Mさんが計画していた相続対策は途中で終了してしまいました。

その結果、多額の相続税が発生することになりました。

〈問題点〉

● 節税ができず相続税の負担が増える

● 子や孫たちへ自分が望む遺産の承継ができない

認知症により贈与契約書や遺言書を作成することができなくなったため、Mさんが望む相続対策が実行できなくなってしまいました。

生前贈与ができなくなり、相続財産を減らすことができず、遺産総額3億円に対する相続税を支払わなければならなくなってしまいました。

配偶者が生存していれば「配偶者の税額軽減の特例」を使って節税することができましたが、すでに亡くなっているため、特例を使うことはできません。

さらには、遺言書を作成することもできなくなり、遺産の承継もMさんが望むようにはできなくなってしまいました。

〈対 策〉

✅ 生前贈与

✅ 生命保険の活用

✅ 不動産整理

もっと早い段階からこのような対策を進めておくべきでした。

認知症になってしまうと、やりたいことができなくなってしまいます。

生前贈与は「相続対策の王道」と言われています。

自分の意思で特定の人に財産を渡すことができ、また相続財産を減らせるため節税になります。

長い年月をかけてより多くの人に生前贈与することで大きな効果を生みます。

生前贈与には、暦年贈与のほかにも相続時精算課税制度もあります。

生命保険に加入しておけば、その後契約者が認知症になっても、死亡保険金は確実に受取人に届きます。

もし、認知症になり自分が加入している生命保険がわからなくなっても、生命保険協会の生命保険契約照会制度で調べることができます。

不動産の継承については、相続では必ずと言っていいほど問題になります。

そのため誰が引き継ぐのかについては早めに決めておくべきです。

不動産は容易に分割することができないため、生命保険金を使って代償金を支払うことで決着させることもできます。

ただし、不動産の共同名義は相続後の維持管理でトラブルになることが多いので避けましょう。

2026.7.30.

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相続

【相続対策事例16】遺言書を作れなかった

〈状 況〉

77歳になるLさんは、そろそろ真剣に自分相続のことを考えなければならないと思っていました。

Lさんの財産は、3,000万円の自宅と2,000万円の預金および300万円の株式でした。

なお、Lさんの妻はすでに亡くなっており、相続人は長男と長女の2人でした。

長男はLさんのすぐ近くに家族と住んでおり、こまめにLさんのお世話をしていました。

一方、長女は結婚して東京で暮らしており、年に一度か二度ほどLさんに会いに来る程度でした。

そのためLさんは「長男には自宅を、長女には預金と株式を残したい」と考えていました。

Lさんは自分の財産の分け方について、遺言書の付言事項にその理由も書いて、子どもたちがもめないようにしておくつもりでした。

ところが、Lさんは認知症を発症しており、認知症の進行状況から、意思能力がないと判断されたため、遺言書を作成することができませんでした。

数年後にLさんが亡くなり、長男と長女で遺産を引き継ぐことになりました。

遺言書がなかったため、相続人である長男と長女で遺産分割協議を行いましたが、なかなか決着がつきませんでした。

法定相続分どおりであれば1/2ずつとなりますが、自宅、預金、株式を納得のいくように分けることは難しく、最終的には家庭裁判所による調停となってしまいました。

〈問題点〉

● 希望どおりに財産を残せない

● 相続争いにつながる

Lさんは認知症を患っており、認知症の進行状況から意思能力がないと判断されたため、遺言書を作成することができませんでした。

そのため自分が望むような財産の承継ができませんでした。

遺言書があればこれに沿った遺産分割が行われますが、遺言書はないため、相続人である長男と長女で遺産分割協議を行わなければなりません。

預金と株式は分割することができますが、自宅を安易に売却することはできないため、分割は困難です。

結果、双方が納得のいく遺産分割での決着をすることができず、相続争いにつながってしまいました。

〈対 策〉

✅ 遺言書の作成

✅ 遺言執行者の指定

認知症を発症し、意思能力がないと判断されてしまうと、やりたいことができなくなります。

必要性を感じたら先延ばしせずに、元気なうちに完了させておくことが大切です。

また、遺言書の内容をスムーズに実行するために、遺言執行者を選任して、遺言書に書いておくことも大切です。

遺言執行者は弁護士や司法書士などの専門家でなくても、自分が望む人を選任することができます。

2026.7.23.

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相続相談の現場から

「まだ元気だから」と相続対策を先延ばしにする心理

日本人の平均寿命 男性は81.09歳 女性は87.13歳

厚生労働省の報告によれば、2024(令和6)年の日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.13歳とのことです。

日本は世界でもトップレベルの長寿国であることはよく知られています。

サラリーマンの定年退職年齢は伸びてきており、経済的な理由もありますが、食生活や医療技術の進歩などにより、元気に働くシニアがとても多くなりました。

今の多くのシニアは、仕事に趣味に、とても活動的です。

平均寿命と健康寿命の違い

「健康寿命」という言葉があります。

健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく送れる期間をいいます。

ちなみに厚生労働省が2022(令和4)年に行った調査では、男性の健康寿命は72.57歳、女性では75.45歳となっています。

平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」があることを意味します。

平均寿命と健康寿命の差を見ると、男性は81.09歳-72.57歳=8.52年、女性は87.03歳-75.45歳=11.68年となります。

男性では人生最後の8.52年、女性では11.68年は、生存はしていても日常生活に制限が出てきてしまい、自分ひとりでは思うような活動はできないということになります。

健康寿命を延ばすための自己管理を行うことが大切ですが、健康寿命が終わるまでに、自分のやりたいこと、やるべきことは、やっておくようにしたいものです。

もしも認知症になってしまったら

最近では、相続対策のひとつとして認知症対策が重要視されています。

認知症と診断された場合、判断能力の状況によっては、預金口座が凍結されてしまうことがあります。

預金口座が凍結されてしまうと、家族でも預金を引き出すことはできません。

また、家族がもめないように遺言書を書こうと思っていても、書けなくなってしまいます。

さらには、自宅を売却してそのお金を老人ホームの入所金に充てようとしても、自宅の売却ができなくなってしまいます。

このように、もしも認知症になってしまったら、いつかやろうと思っていたことができなくなってしまうのです。

相続対策は元気な今のうちにやっておくべき

相続の相談を受けていると、「自分は元気だから、相続対策はまだ先でいい」と思っている人がとても多いです。

もしも突然認知症になってしまったら、やろうと思っていたことができなくなってしまいます。

「円満相続にむけて、財産を分けやすいように整理する」

「財産の分け方を遺言書に書く」

「生命保険を活用して、相続税の納税資金を確保する、特定の人に財産を渡す、遺産分割協議がまとまるまでの間に使える現金を確保しておく。」

これらはみな実際にやろうとすると体力・気力が必要で、元気なうちにしかできません。

相続対策を行ったとしても、状況は刻々と変化していきますので、見直す必要があります。

「自分は元気だから、相続対策はまだ先でいい」と先延ばしにせずに、元気な今こそ相続対策をスタートさせましょう。

2026.7.17.

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相続

【相続対策事例15】実家を売却できなくなった

〈状 況〉

ひとり暮らしをしていた母親(80代)が認知症を患い、ひとりで生活することが困難になったため、子どもたちは母親に老人ホームへ入居してもらいました。

今後、母親が実家に戻るということは考えられず、子どもたちは「実家は空き家になる」と考えていました。

空き家になった実家を売却して老人ホームの費用に充てようしましたが、母親は認知症を患っているため、売買契約を締結することができませんでした。

認知症になると、本人の意思能力(判断能力)が低下しているとみなされ、原則として自宅を売却することはできなくなります。

たとえ配偶者や子どもであっても、本人の代理として勝手に売却手続きを進めることは法律上認められていません。

不動産売買は重要な法的行為です。

所有者本人に「自分が家を売り、代金を受け取る」という結果を正しく理解する意思能力がなければ、契約を結んでも法的に無効となります。

不動産会社や司法書士は、契約時に必ず本人の意思能力を確認するため、認知症が進行していると手続きを拒否します。

〈問題点〉

実家の老朽化も進んでいたため、子どもたちには実家を引き継いで生活するという考えはありませんでした。

また、母親が認知症ということで、実家を売却することもできません。

その結果、次のような問題が生じてしまいました。

●誰も住んでいないのに管理費だけがかかってしまう

●管理ができていないと近隣から苦情が来る

●固定資産税も払い続けなければならない

●あてにしていた実家の売却資金を介護費に充てられない

〈対 策〉

相続対策は家族が困らないように生前に行っておくものですが、認知症になる前に行っておくべきものといえます。

この事例の場合、母親が認知症になる前に、例えば次のような準備をしていたら問題は解決できたと考えられます。

✅家族信託

✅実家の売却を見据えた資産整理

2026.7.10.