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相続相談の現場から

親の介護をした人の言い分

遺産分割で親の介護をしたことを主張する人

遺産をどのように分けるかを協議する際に「自分は親の介護をしたのだから、その分を考慮してほしい」と主張するケースがあります。

確かに介護は大変な重労働です。

しかも、長男だから、長女だから、親と同居しているから、親の近くに住んでいるからという理由で、親の介護を請け負うことが多いです。

実際に親の介護をしていない他の兄弟姉妹には理解できない苦労です。

だからその分、他の兄弟姉妹よりも多く遺産をもらう権利があるはず。

その気持ち理解できなくはありません。

寄与分

相続には「寄与分」という制度があります。

これは、相続人の中に相続財産を維持・増加する上で特別に貢献した者がいる場合、その相続人には、他の相続人に優先して、多くの相続財産を受けることができるというものです。

子が親の面倒をみても原則として寄与分にはならない

では、兄弟姉妹の中で自分だけが親の介護をした場合、それは寄与分として認められるのでしょうか?

残念ながら、原則として寄与分は認められません。

子が親の面倒をみるのは「扶養」であり、子としては当然の行為とされるからです。

寄与分を認めてもらうためには、介護をしたことによって親に対して並々ならぬ多大な貢献があったことを、全相続人に証明して納得してもらう必要があります。

相続人間での協議がまとまらず、どうしても認めてもらいたいときは家庭裁判所の判断を仰ぐことになります。

相続人以外の親族が義理の親の介護をしたら

ではもし相続人以外の親族、例えば子の妻が義理の親を無償で介護した場合はどうなのでしょうか?

義理の親の財産の維持・管理について特別の貢献をした場合、義理の親の相続開始後、子の妻は「特別寄与者」として相続人に対して金銭(特別寄与料)を請求することができます。

特別寄与料の金額は相続人との協議になりますが、決らなければ家庭裁判所へ協議に代わる処分を請求することができます。

なお、特別寄与料の金額が確定すると、特別寄与料を遺贈により取得したとみなされ、特別寄与者には相続税が課税されますので注意が必要です。

2026.10.5.

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遺言書は書くべき

遺言書は全員に書いてほしい

遺言書があれば遺言書にしたがって遺産分割が行われます。

そのため争い事を防ぐのに大きな効果があります。

一方で、遺言書がなかったら、相続人全員で遺産の分割方法を決めなければなりません。

決まらなければ家庭裁判所での調停へと進みます。

今はどんなに仲が良い兄弟姉妹でも将来のことはわかりません。

自分の遺産相続で家族がもめないようにするためには遺言書が必要です。

外国では遺言書を書くことは一般的ですが、日本では遺言書を書く人はまだまだ少ないです。

遺言書は全員に書いてほしいです。

「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」が代表的

遺言書の代表的なものとして「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つがあります。

公正証書遺言は、公証役場で法律にくわしい公証人に作成してもらいます。

自筆証書遺言は、いつでも自分ひとりで作成することができます。

それぞれに長所・短所があるので、どちらで作成する方がよいのか見極める必要があります。

国も遺言書を作成しやすくするために改定を行っています。

公正証書遺言では、公正証書のデジタル化により、公証人との面談は必要ですが、条件が整えば公証役場まで行かなくてもオンラインで完結できるようになりました。

自筆証書遺言では、2020年7月から法務局による「自筆証書遺言保管制度」が実施されています。

この制度を利用すれば、それまで自筆証書遺言書の懸念事項となっていた遺言書の偽造や紛失を防止することができ、家庭裁判所での検認を不要とすることもできます。

遺言の内容が複雑でトラブルを引き起こす心配があるのであれば、時間や手間、費用もかかりますが、公正証書遺言で作成するべきでしょう。

特に遺言書を書いた方がいい人

次のような人にはぜひ遺言書を書いてほしいです。

①財産が少ない人

兄弟姉妹間の感情のずれ、意地の張り合い、不満、恨み、妬みなどが争いごとのきっかけになります。

相続争いは、遺産総額が5,000万円以下のケースが全体の約80%を占めます。

財産が多い人は、もめることがわかっているので、あらかじめ対策をしています。

「大した財産はないから、わが家は大丈夫」と思っている人こそ、何の対策もしていないためもめてしまいます。

②家族仲が良い人

今は兄弟姉妹の仲が良くても、それぞれに家庭ができると血縁関係がうすくなっていき、気まずくなっていくことがあります。

源 頼朝と源 義経のように将来のことはわかりません。

③子どもがいない人

子どもがいない夫婦の場合、夫の相続人は妻と兄弟姉妹であることが多いようです。

兄弟姉妹との仲があまりよくなく、自分の財産はすべて妻にあげたいと思うことがあります。

そのような場合には、兄弟姉妹には遺留分(法律上、最低限相続できる相続分)がないため、遺言書で「すべての財産を妻に相続させる」と書けば想いを実現することができます。

④心配事がある人

障がいをお持ちの子がいるなど将来の行く末に心配な家族がいる場合、その人の生活を守るために遺言書は非常に効果的です。

⑤海外に子がいる人

最近は生活の拠点を海外に置く人が増えてきました。

例えば、遺産分割協議書を作成する場合、相続人が海外に住んでいると、書類の取り寄せなどに時間や手間がかかることが考えられます。

⑥相続人がいない人

相続人がいない人の財産は、何もしなければ国庫に帰属します。

財産は誰にでも引き継ぐことができます。

お世話になった人や寄付したい団体などがあれば、遺言書を書いて自分の想いを成就させることができます。

遺言書を書く際には「遺留分」に注意

遺留分とは、一定の相続人が最低限相続できる相続分のことで、民法に定められています。

遺言書があれば、そこに書かれた分け方が優先しますので、一人に全財産を相続させるなどの内容では他の相続人は納得しません。

そのため遺留分の権利が保証されているのです。

ただ、遺留分の権利は、配偶者、子、父母にはありますが、兄弟姉妹にはありません。

そして遺留分の割合は、原則として法定相続分の半分ですが、相続人が父母のみの場合には法定相続分の1/3です。

もし遺言書で遺留分が侵害されているのであれば、奪われた相続分を取り戻すことができます。

このように遺留分は相続人にとって最低限の保障であり、強力な権利です。

ただし、遺留分の行使(遺留分侵害額請求)には期間制限があります。

次の期間を経過すると権利が時効となるので注意が必要です。

✅ 相続開始および遺留分侵害を知った日から1年経過

✅ 相続開始の時から10年経過

遺言書を書く際には遺留分には十分に注意することが大切です。

2026.9.11.

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相続対策と相続税対策は別物

相続対策とは? 相続税対策とは?

相続セミナーに参加していただいた方と話していると、相続対策とは節税対策と考えている方がとても多いことを感じます。

相続対策=相続税対策というイメージです。

しかし相続対策と相続税対策は別物です。

相続対策を考えるときには、税金のことだけでなく、相続全体で考えなければなりません。

つまり、相続対策=相続税対策+遺産分割対策+流動性資金対策となります。

相続税対策は相続対策の一部なのです。

このことを理解していない方がとても多いので、セミナーでしっかりとお話するようにしています。

さらに言えば、ここ最近では4つめの相続対策として「認知症対策」がとても重要視されています。

相続税がかかってくる人は確かに増えた

もうひとつ、相続セミナーに参加していただいた方と話していて感じるのは、「相続税の税制が変わって、相続税がかかってくる人が増えたんだよね」と認識されている方が多いことです。

確かにそのとおりです。

もう10年も前になりますが、2015年から相続税を計算する際の基礎控除額が40%引き下げられました。

改正前には相続税が課税される人の割合は、亡くなった人の約22人に1人でした。

ところが2024年には約10人に1人となり、東京都内であれば約3人に1人は相続税が課税されていると言われています。

地価の上昇もあり、東京都内に住んでいると、相続税の課税対象になる人が多いのでしょう。

一般的な家庭では相続税はかからない

相続税の計算においては、いくつかの特例があり、特例を適用することで節税できることができます。

具体的には「配偶者の税額軽減の特例」「小規模宅地等の評価減の特例」などです。

遺産総額が1億円以下の一般的な家庭では、特例を適用すれば、相続税をゼロにできるケースも多いです。

遺産分割や二次相続の問題はありますが、配偶者の税額軽減の特例を適用すると、配偶者が受け取る財産が1億6,000万円以下であれば配偶者には相続税はかかりません。

財産は夫婦で築いてきたものだから、ということなのでしょう。

それにしてもすごい特例ですよね。

遺産分割事件の約80%は遺産価額5,000万円以下で起きている

相続対策でもうひとつ知っておいていただきたいことがあります。

2025年に最高裁判所がまとめた「遺産価額別 遺産分割事件の件数」によれば、遺産分割事件の約80%は遺産価額5,000万円以下で起きているとのことです。

約5件に4件の割合です。

さらには遺産価額1,000万円以下のケースが約35%を占めており、約3件に1件ということになります。

一方で遺産価額1億円超の割合はどうだったかというと、全体の約7%でした。

相続財産が多いからもめるのではなく、少ないからもめることがわかります。

なぜでしょう?

相続財産が多い家庭はもめることがわかっているので、あらかじめ相続対策を行っています。

逆に「わが家はそれほど財産もないし、子どもたちも仲が良いからもめないだろう」という家庭では相続対策を行いません。

そのため「わが家は大丈夫」と思っている家庭こそが危ないのです。

今は仲が良くても、将来のことはわかりません。

源 頼朝と源 義経のようにならないためにも、遺言書を書いておくとか生前にできることはやっておくことが大切です。

2026.8.7.

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「まだ元気だから」と相続対策を先延ばしにする心理

日本人の平均寿命 男性は81.09歳 女性は87.13歳

厚生労働省の報告によれば、2024(令和6)年の日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.13歳とのことです。

日本は世界でもトップレベルの長寿国であることはよく知られています。

サラリーマンの定年退職年齢は伸びてきており、経済的な理由もありますが、食生活や医療技術の進歩などにより、元気に働くシニアがとても多くなりました。

今の多くのシニアは、仕事に趣味に、とても活動的です。

平均寿命と健康寿命の違い

「健康寿命」という言葉があります。

健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく送れる期間をいいます。

ちなみに厚生労働省が2022(令和4)年に行った調査では、男性の健康寿命は72.57歳、女性では75.45歳となっています。

平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」があることを意味します。

平均寿命と健康寿命の差を見ると、男性は81.09歳-72.57歳=8.52年、女性は87.03歳-75.45歳=11.68年となります。

男性では人生最後の8.52年、女性では11.68年は、生存はしていても日常生活に制限が出てきてしまい、自分ひとりでは思うような活動はできないということになります。

健康寿命を延ばすための自己管理を行うことが大切ですが、健康寿命が終わるまでに、自分のやりたいこと、やるべきことは、やっておくようにしたいものです。

もしも認知症になってしまったら

最近では、相続対策のひとつとして認知症対策が重要視されています。

認知症と診断された場合、判断能力の状況によっては、預金口座が凍結されてしまうことがあります。

預金口座が凍結されてしまうと、家族でも預金を引き出すことはできません。

また、家族がもめないように遺言書を書こうと思っていても、書けなくなってしまいます。

さらには、自宅を売却してそのお金を老人ホームの入所金に充てようとしても、自宅の売却ができなくなってしまいます。

このように、もしも認知症になってしまったら、いつかやろうと思っていたことができなくなってしまうのです。

相続対策は元気な今のうちにやっておくべき

相続の相談を受けていると、「自分は元気だから、相続対策はまだ先でいい」と思っている人がとても多いです。

もしも突然認知症になってしまったら、やろうと思っていたことができなくなってしまいます。

「円満相続にむけて、財産を分けやすいように整理する」

「財産の分け方を遺言書に書く」

「生命保険を活用して、相続税の納税資金を確保する、特定の人に財産を渡す、遺産分割協議がまとまるまでの間に使える現金を確保しておく。」

これらはみな実際にやろうとすると体力・気力が必要で、元気なうちにしかできません。

相続対策を行ったとしても、状況は刻々と変化していきますので、見直す必要があります。

「自分は元気だから、相続対策はまだ先でいい」と先延ばしにせずに、元気な今こそ相続対策をスタートさせましょう。

2026.7.17.

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「うちは財産が少ないから大丈夫」の落とし穴

一般家庭の相続財産は「自宅」と「少しの金融資産」

「相続対策は一部のお金持ちがやるもので、わが家には不要」と思っている人が結構いらっしゃいます。

確かに一般的な家庭における相続財産はというと、「自宅」と「少しの金融資産」というケースが多いです。

相続税には、配偶者の税額軽減の特例や小規模宅地等の特例などがあり、これらの特例を適用すれば、多くの場合、相続税はかからない、もしくはかかっても少額といえるでしょう。

そのため「相続対策は必要ない」と考える人が多いのだと思います。

相続対策と相続税対策は別物

相続対策と聞いて、相続税の節税対策を思い浮かべる人が多くいらっしゃいます。

ですが、相続対策と相続税対策は別物なのです。

より正確にいえば、相続税対策は相続対策の一部です。

そのため「相続税の節税対策を行えば、相続対策は完了」ということにはならないのです。

では相続対策には相続税対策の他に何があるのでしょうか?

答えとしては、相続財産の円満な分割に備えるための「遺産分割対策」と、相続が発生した後すぐに使えるお金に備えるための「流動性資金対策」があります。

相続対策には3つの対策ある、ということになりますが、相続専門FPの立場からすると、その中で最も重要と考えるのは「遺産分割対策」です。

遺産分割事件の約80%は遺産価額5,000万円以下という現実

最高裁判所事務総局がまとめた「令和7年 司法統計年報」によれば、遺産価額別にみた遺産分割事件の件数は、総件数の約80%が遺産価額5,000万円以下でした。

約5件に4件は遺産価額5,000万円以下ということになります。

さらには総件数の約35%が遺産価額1,000万円以下であり、約3件に1件は遺産価額1,000万円以下でということになります。

財産が多いからもめるのではなく、財産が少ないからもめるのです。

財産の多い資産家は、もともともめることがわかっているので、節税対策なり遺産分割対策を事前に行っているということなのでしょう。

「うちは財産が少ないから大丈夫」という認識は危険だということですね。

相続の問題は税金よりも遺産分割の方が重要

繰り返しになりますが、一般的な家庭においては、特例を適用すれば「相続税はかからない、かかっても少額」です。

相続対策というと節税のことを思い浮かべる人が多いのですが、相続の問題は税金よりも遺産分割の方が重要ということがわかります。

民法には、一定の相続人が最低限相続できる相続分として「遺留分」が定められています。

相続財産が「自宅」と「少しの金融資産」という場合、円満な遺産分割のためとはいえ、自宅を売却するというのは簡単にできることではありません。

相続発生後や認知症になってしまってからでは対策を打つことができなくなってしまいます。

元気なうちに、遺言書を書いたり生命保険を活用するなどして、相続対策を行っておくことが円満相続の秘訣です。

2026.7.2.

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相続相談の現場から

なぜ相続対策をしないのですか?

相続対策を考えていないシニアが多い

「多くの資産を持っている」とか「相続人がたくさんいるから」という人は、もともと相続に危機感を感じているので、自発的に生前に対策を行っています。

では資産額が1億円以下の場合はどうかというと、相続の準備に関心を持っている人がとれも少ないのが現状です。

「相続対策はお金持ちがすること」と考えている人が多いからでしょうか?

わが家は大丈夫と思っている人が多い

「わが家には相続税がかかるほどの財産はない」とか「わが家はみんな仲がいいから相続でもめることはない」など、わが家は大丈夫と思っている人が結構いらっしゃいます。

確かに資産家でなければ税金のこともそれほど気にならないし、財産もそんなにないので相続でもめることは考えにくいのかもしれません。

本当に大丈夫?

でも本当に大丈夫ですか?

2024(令和6)年に遺産分割をめぐる家庭裁判所における調停件数は約17,000件でした。

このうち約80%が遺産総額5,000万円以下でした。

さらには遺産総額1,000万円以下の件数は約35%でした。

遺産分割における調停件数の約1/3は遺産総額1,000万円以下。

この実態を見ると、財産が多いよりも少ない方がもめるケースが多いことがわかります。

家族ができると血縁関係がうすくなり、いずれ兄弟姉妹間が気まずくなるというのはよくあることです。

源 頼朝と源 義経のように将来は微妙です。

相続の準備は“先延ばし”にすると選択肢がどんどん狭まっていきます

遺言書があれば、これに則って相続が行われるため、基本的にはもめごとは起こりません。

ただし、認知症になってしまったら遺言書を書くことはできなくなります。

遺言書がなければ、すべての相続人で財産の分け方を決めなければなりません。

一度紛争になると家族関係の修復は困難です。

相続の準備は“先延ばし”にすると選択肢がどんどん狭まっていきます。

元気なうちにできることはやっておく。

将来、相続で家族がもめないために必要なことではないでしょうか。

2026.6.19.