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相続相談の現場から

「まだ元気だから」と相続対策を先延ばしにする心理

日本人の平均寿命 男性は81.09歳 女性は87.13歳

厚生労働省の報告によれば、2024(令和6)年の日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.13歳とのことです。

日本は世界でもトップレベルの長寿国であることはよく知られています。

サラリーマンの定年退職年齢は伸びてきており、経済的な理由もありますが、食生活や医療技術の進歩などにより、元気に働くシニアがとても多くなりました。

今の多くのシニアは、仕事に趣味に、とても活動的です。

平均寿命と健康寿命の違い

「健康寿命」という言葉があります。

健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく送れる期間をいいます。

ちなみに厚生労働省が2022(令和4)年に行った調査では、男性の健康寿命は72.57歳、女性では75.45歳となっています。

平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」があることを意味します。

平均寿命と健康寿命の差を見ると、男性は81.09歳-72.57歳=8.52年、女性は87.03歳-75.45歳=11.68年となります。

男性では人生最後の8.52年、女性では11.68年は、生存はしていても日常生活に制限が出てきてしまい、自分ひとりでは思うような活動はできないということになります。

健康寿命を延ばすための自己管理を行うことが大切ですが、健康寿命が終わるまでに、自分のやりたいこと、やるべきことは、やっておくようにしたいものです。

もしも認知症になってしまったら

最近では、相続対策のひとつとして認知症対策が重要視されています。

認知症と診断された場合、判断能力の状況によっては、預金口座が凍結されてしまうことがあります。

預金口座が凍結されてしまうと、家族でも預金を引き出すことはできません。

また、家族がもめないように遺言書を書こうと思っていても、書けなくなってしまいます。

さらには、自宅を売却してそのお金を老人ホームの入所金に充てようとしても、自宅の売却ができなくなってしまいます。

このように、もしも認知症になってしまったら、いつかやろうと思っていたことができなくなってしまうのです。

相続対策は元気な今のうちにやっておくべき

相続の相談を受けていると、「自分は元気だから、相続対策はまだ先でいい」と思っている人がとても多いです。

もしも突然認知症になってしまったら、やろうと思っていたことができなくなってしまいます。

「円満相続にむけて、財産を分けやすいように整理する」

「財産の分け方を遺言書に書く」

「生命保険を活用して、相続税の納税資金を確保する、特定の人に財産を渡す、遺産分割協議がまとまるまでの間に使える現金を確保しておく。」

これらはみな実際にやろうとすると体力・気力が必要で、元気なうちにしかできません。

相続対策を行ったとしても、状況は刻々と変化していきますので、見直す必要があります。

「自分は元気だから、相続対策はまだ先でいい」と先延ばしにせずに、元気な今こそ相続対策をスタートさせましょう。

2026.7.17.

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「うちは財産が少ないから大丈夫」の落とし穴

一般家庭の相続財産は「自宅」と「少しの金融資産」

「相続対策は一部のお金持ちがやるもので、わが家には不要」と思っている人が結構いらっしゃいます。

確かに一般的な家庭における相続財産はというと、「自宅」と「少しの金融資産」というケースが多いです。

相続税には、配偶者の税額軽減の特例や小規模宅地等の特例などがあり、これらの特例を適用すれば、多くの場合、相続税はかからない、もしくはかかっても少額といえるでしょう。

そのため「相続対策は必要ない」と考える人が多いのだと思います。

相続対策と相続税対策は別物

相続対策と聞いて、相続税の節税対策を思い浮かべる人が多くいらっしゃいます。

ですが、相続対策と相続税対策は別物なのです。

より正確にいえば、相続税対策は相続対策の一部です。

そのため「相続税の節税対策を行えば、相続対策は完了」ということにはならないのです。

では相続対策には相続税対策の他に何があるのでしょうか?

答えとしては、相続財産の円満な分割に備えるための「遺産分割対策」と、相続が発生した後すぐに使えるお金に備えるための「流動性資金対策」があります。

相続対策には3つの対策ある、ということになりますが、相続専門FPの立場からすると、その中で最も重要と考えるのは「遺産分割対策」です。

遺産分割事件の約80%は遺産価額5,000万円以下という現実

最高裁判所事務総局がまとめた「令和7年 司法統計年報」によれば、遺産価額別にみた遺産分割事件の件数は、総件数の約80%が遺産価額5,000万円以下でした。

約5件に4件は遺産価額5,000万円以下ということになります。

さらには総件数の約35%が遺産価額1,000万円以下であり、約3件に1件は遺産価額1,000万円以下でということになります。

財産が多いからもめるのではなく、財産が少ないからもめるのです。

財産の多い資産家は、もともともめることがわかっているので、節税対策なり遺産分割対策を事前に行っているということなのでしょう。

「うちは財産が少ないから大丈夫」という認識は危険だということですね。

相続の問題は税金よりも遺産分割の方が重要

繰り返しになりますが、一般的な家庭においては、特例を適用すれば「相続税はかからない、かかっても少額」です。

相続対策というと節税のことを思い浮かべる人が多いのですが、相続の問題は税金よりも遺産分割の方が重要ということがわかります。

民法には、一定の相続人が最低限相続できる相続分として「遺留分」が定められています。

相続財産が「自宅」と「少しの金融資産」という場合、円満な遺産分割のためとはいえ、自宅を売却するというのは簡単にできることではありません。

相続発生後や認知症になってしまってからでは対策を打つことができなくなってしまいます。

元気なうちに、遺言書を書いたり生命保険を活用するなどして、相続対策を行っておくことが円満相続の秘訣です。

2026.7.2.

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なぜ相続対策をしないのですか?

相続対策を考えていないシニアが多い

「多くの資産を持っている」とか「相続人がたくさんいるから」という人は、もともと相続に危機感を感じているので、自発的に生前に対策を行っています。

では資産額が1億円以下の場合はどうかというと、相続の準備に関心を持っている人がとれも少ないのが現状です。

「相続対策はお金持ちがすること」と考えている人が多いからでしょうか?

わが家は大丈夫と思っている人が多い

「わが家には相続税がかかるほどの財産はない」とか「わが家はみんな仲がいいから相続でもめることはない」など、わが家は大丈夫と思っている人が結構いらっしゃいます。

確かに資産家でなければ税金のこともそれほど気にならないし、財産もそんなにないので相続でもめることは考えにくいのかもしれません。

本当に大丈夫?

でも本当に大丈夫ですか?

2024(令和6)年に遺産分割をめぐる家庭裁判所における調停件数は約17,000件でした。

このうち約80%が遺産総額5,000万円以下でした。

さらには遺産総額1,000万円以下の件数は約35%でした。

遺産分割における調停件数の約1/3は遺産総額1,000万円以下。

この実態を見ると、財産が多いよりも少ない方がもめるケースが多いことがわかります。

家族ができると血縁関係がうすくなり、いずれ兄弟姉妹間が気まずくなるというのはよくあることです。

源 頼朝と源 義経のように将来は微妙です。

相続の準備は“先延ばし”にすると選択肢がどんどん狭まっていきます

遺言書があれば、これに則って相続が行われるため、基本的にはもめごとは起こりません。

ただし、認知症になってしまったら遺言書を書くことはできなくなります。

遺言書がなければ、すべての相続人で財産の分け方を決めなければなりません。

一度紛争になると家族関係の修復は困難です。

相続の準備は“先延ばし”にすると選択肢がどんどん狭まっていきます。

元気なうちにできることはやっておく。

将来、相続で家族がもめないために必要なことではないでしょうか。

2026.6.19.