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相続

【相続対策事例19】長男が自宅を相続したが、他の相続人への代償金が払えない

〈事 例〉

父親(81歳)が亡くなりました。

相続人は長男・次男の2人でした。

父親の財産は3,000万円の自宅と1,000万円の預貯金でした。

長男は父親とずっと同居して生活してきており、「自宅は自分が相続したい」と考えていました。

相続人は子2人なので、法定相続分としては1/2ずつとなります。

そのため、長男が自宅を相続すると、次男との間で遺産の分け方に大きな差が生じてしまいます。

父親は財産の分け方について子どもたちと特に話をしていませんでした。

また、遺言書も書いていませんでした。

〈対 策〉

✅父親の生前に財産全体を整理したうえで、生命保険を活用して、長男から次男へ
 代償金が支払えるように準備しておく

✅遺産の分け方について、父親は遺言書を書いておく

〈ポイント解説〉

相続でまず確認すること

相続対策の第一歩として、「相続人は誰なのか?」「相続財産には何があるのか?」「遺言書はあるのか?」をまずは確認します。

戸籍を確認してみたら「実は相続人は別にまだいた」ということは珍しいことではありません。

また、相続財産はプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も把握する必要があります。

「うちは大した財産はないから」と思っていても、全財産を把握することは、なかなか大変なものです。

相続人や相続財産を正確に把握できなければ、円満な相続はできません。

不動産は「分けにくい」から悩ましい

このケースのように、一般的な家庭では、相続財産は自宅と預貯金ということが多いです。

悩ましいのは、不動産は「分けにくい」という特徴があることです。

不動産を売却して、その売却資金で遺産分割を行うことができればよいのですが、簡単に売却することはできません。

ではどうしたらよいのでしょうか?

不動産だけでなく、預貯金や生命保険なども含めて遺産分割を考えます。

●生命保険金を使った代償分割

生命保険金を活用した代償分割を行うという方法があります。

ただし、生命保険金は原則として受取人固有の財産であることに注意が必要です。

受取人固有の財産ということは相続財産ではないということです。

そのため遺留分(最低限相続できる相続分)を考える際には、生命保険金を除外して考えなければなりません。

では具体的にはどのようにすればよいのでしょうか?

このケースの場合には、長男がいったん全ての財産と生命保険金を受取り、そこから代償金を長男から次男へ支払うようにします。

トラブルを避けるためには、生命保険金の受取人を次男とはしないことがポイントです。

生命保険金は受取人の固有財産であるため、次男は生命保険金を除いて、自分の適正な相続分を主張してくるからです。

●円満相続のために

父親は、遺産の分割について、遺言書にきちんと書いておくことが大切です。

ただし、遺言書を一人で書いておけばそれで安心ということにはなりません。

遺言書を書く前に、長男と次男を交えて、遺産の分け方について家族会議を実施し、家族間の合意形成を図っておくことでトラブルを避けることができます。

2026.8.28.

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相続

【相続対策事例18】成年後見制度を利用したが、財産が自由に使えなかった

〈状況〉

Nさん(78歳)は認知症と診断され、医師のすすめにより成年後見制度を利用することにしました。

成年後見制度とは、認知症などにより判断能力が衰えた人や知的障がいのある人などの財産を管理し、契約など法的な面から日常生活を守る制度です。

成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。

法定後見制度は、すでに判断能力が不十分な人のための制度です。

一方で任意後見制度は、まだ判断能力のあるうちに、将来に判断能力が衰えたときに備えて、自分を守ってもらう契約を結んでおく制度です。

任意後見制度は、「誰に、どのようなことを頼むか」という内容を前もって決めておいて、実際に判断能力が不十分になったときに、契約がスタートします。

Nさんの場合は、すでに判断能力が不十分であると診断されていたため、法定後見制度を利用することになりました。

成年後見制度では一般的に、守る立場の人を「後見人」といい、守られる立場の人を「被後見人」といいます。

なお、法定後見制度では、被後見人の判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の3つの分類があります。

後見人は被後見人の利益を守ることが最優先となります。

Nさんの場合

・孫への教育資金援助

・相続税対策のための生前贈与

・アパート建築

・資産運用

などが認められませんでした。

〈問題点〉

●柔軟な相続対策ができない

●資産活用が制限される

法定後見制度では、後見人に「代理権」「同意見」「取消権」などの権限が与えられています。

後見人の立場が「後見」「保佐」「補助」のいずれに該当するかによって、後見人の権限が代理なのか同意なのか、また代理や同意によってできる範囲が異なります。

また、法定後見制度は家庭裁判所の審判によって利用するため、家庭裁判所への申立費用と後見人に対する報酬の支払いが生じます。

〈対策〉

✅ 家族信託

✅ 任意後見契約

✅ 遺言書

認知症になる前に、例えばこれらを組み合わせて準備しておくことで、多くの問題を回避することができたと考えられます。

認知症対策は介護だけでなく、「相続対策」としても重要です。

認知症になると、本人の財産であっても自由に管理・処分できなくなるケースがあります。

その結果、預金の払い戻し、不動産の売却、生前贈与、遺言書の作成などが難しくなり、家族が思わぬ負担を抱えることも少なくありません。

だからこそ、判断能力が十分にあるうちに準備を始めることが大切です。

家族信託、任意後見契約、遺言書、生命保険などを適切に組み合わせることで、将来の不安を大きく軽減できます。

相続対策は「亡くなる前の対策」だけではありません。

「認知症になる前の対策」でもあることを、ぜひ覚えておいていただきたいと思います。

〈注〉
この記事は2026年8月時点の情報にもとづき作成しており、成年後見制度については、2028年頃の実施を目指して、さらに利用しやすくなるような改正が行われることが確定しています。

 現行制度改正後
利用期間被後見人が亡くなるまで必要な期間だけ
報酬の支払い一生涯(毎月)必要な期間だけ
後見人一度決まれば交代は困難最適な人に交代可
本人の意思後見人が代行して決める後見人が支える

2026.8.21.

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相続相談の現場から

相続対策と相続税対策は別物

相続対策とは? 相続税対策とは?

相続セミナーに参加していただいた方と話していると、相続対策とは節税対策と考えている方がとても多いことを感じます。

相続対策=相続税対策というイメージです。

しかし相続対策と相続税対策は別物です。

相続対策を考えるときには、税金のことだけでなく、相続全体で考えなければなりません。

つまり、相続対策=相続税対策+遺産分割対策+流動性資金対策となります。

相続税対策は相続対策の一部なのです。

このことを理解していない方がとても多いので、セミナーでしっかりとお話するようにしています。

さらに言えば、ここ最近では4つめの相続対策として「認知症対策」がとても重要視されています。

相続税がかかってくる人は確かに増えた

もうひとつ、相続セミナーに参加していただいた方と話していて感じるのは、「相続税の税制が変わって、相続税がかかってくる人が増えたんだよね」と認識されている方が多いことです。

確かにそのとおりです。

もう10年も前になりますが、2015年から相続税を計算する際の基礎控除額が40%引き下げられました。

改正前には相続税が課税される人の割合は、亡くなった人の約22人に1人でした。

ところが2024年には約10人に1人となり、東京都内であれば約3人に1人は相続税が課税されていると言われています。

地価の上昇もあり、東京都内に住んでいると、相続税の課税対象になる人が多いのでしょう。

一般的な家庭では相続税はかからない

相続税の計算においては、いくつかの特例があり、特例を適用することで節税できることができます。

具体的には「配偶者の税額軽減の特例」「小規模宅地等の評価減の特例」などです。

遺産総額が1億円以下の一般的な家庭では、特例を適用すれば、相続税をゼロにできるケースも多いです。

遺産分割や二次相続の問題はありますが、配偶者の税額軽減の特例を適用すると、配偶者が受け取る財産が1億6,000万円以下であれば配偶者には相続税はかかりません。

財産は夫婦で築いてきたものだから、ということなのでしょう。

それにしてもすごい特例ですよね。

遺産分割事件の約80%は遺産価額5,000万円以下で起きている

相続対策でもうひとつ知っておいていただきたいことがあります。

2025年に最高裁判所がまとめた「遺産価額別 遺産分割事件の件数」によれば、遺産分割事件の約80%は遺産価額5,000万円以下で起きているとのことです。

約5件に4件の割合です。

さらには遺産価額1,000万円以下のケースが約35%を占めており、約3件に1件ということになります。

一方で遺産価額1億円超の割合はどうだったかというと、全体の約7%でした。

相続財産が多いからもめるのではなく、少ないからもめることがわかります。

なぜでしょう?

相続財産が多い家庭はもめることがわかっているので、あらかじめ相続対策を行っています。

逆に「わが家はそれほど財産もないし、子どもたちも仲が良いからもめないだろう」という家庭では相続対策を行いません。

そのため「わが家は大丈夫」と思っている家庭こそが危ないのです。

今は仲が良くても、将来のことはわかりません。

源 頼朝と源 義経のようにならないためにも、遺言書を書いておくとか生前にできることはやっておくことが大切です。

2026.8.7.