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生命保険

私が認知症になったら、保険金の請求はどうすればいいの?

厚生労働省の調査では、2025年には65歳以上の人のうち、およそ5人に1人が認知症を患うという結果が出ています。

保険に加入していても、認知症を患い、肝心なときに保険金の請求ができないということも起こり得ます。

そのための対策について調べてみました。

●家族などが自分に代わって保険の手続きができる制度

保険金は保険会社に対して請求をしなければ受け取ることができません。

保険に加入していても、認知症などにより保険金の請求ができないということが考えられます。

そこで「家族などが自分に代わって保険の手続きをすることができないか」ということになるのですが、頼りになる制度が3つあります。

「指定代理請求制度」「家族情報登録制度」「保険契約者代理制度」です。

いずれの制度も、契約者や被保険者に判断能力があるうちに手続きをしなければなりません。

それぞれの制度について、家族などが代行できることを簡単にまとめると次のようになります。

 契約内容照会保険金請求解約
指定代理請求制度×
家族情報登録制度××
保険契約者代理制度

指定代理請求制度

保険金請求をする意思表示ができなかったり、病名や余命の告知を受けていないなどの特別な事情がある場合に、契約者が家族などのあらかじめ指定した代理人が、被保険者に代わって、契約内容照会や保険金請求ができる制度です。

契約者は被保険者から同意を得る必要があります。

家族情報登録制度

事前に同意を得て、家族の連絡先を登録しておく制度です。

契約者本人と連絡がとれない場合などに、生命保険会社が登録されている人に対して、契約者の連絡先などの確認を行う制度です。

これによって保険金請求もれを防止することができます。

なお、保険金受取人に代わって保険金請求をすることはできません。

保険契約者代理制度

契約者が意思表示できない場合などに、あらかじめ指定された家族などの代理人が、契約者に代わって、契約内容照会、住所変更、保険金請求、解約などの手続きをすることができる制度です。

●家族の保険契約の有無を確認できる「生命保険契約照会制度」

家族の判断能力が低下してしまった場合や死亡した場合に、その人が保険契約者または被保険者になっている生命保険契約の有無を確認できる制度です。

生命保険協会が運営しています。

1名につき3,000円の利用料がかかるほか、公的書類や医師の診断書などが必要になります。

この制度を利用することにより、生命保険協会に加盟している全生命保険会社において、生命保険契約の有無を確認することができます。

もし自分が認知症などにより意思表示ができなくなってしまっても、せっかく加入している保険が無駄にならないよう、健康な今のうちから利用できる制度をおさえてきましょう。

制度を利用したいと思ったら、早速生命保険会社に問い合わせてみましょう。

2024.3.23

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生命保険

妻が受け取れる遺族厚生年金は2,400万円! シニアには生命保険は不要?

会社員であった夫が亡くなると国の公的年金制度から遺族年金を受け取ることができます。

遺族年金には「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」の2つがあります。

遺族年金は残された遺族の生活費として支給されます。

一方で、遺族の生活費を保障するものに生命保険があります。

では、遺族年金がもらえるのなら生命保険はいらないのでしょうか?

1.遺族年金とは

遺族年金とは、一家の働き手などが亡くなったときに、国の公的年金制度から遺族に給付される年金です。

遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つがあります。

20歳以上60歳未満のすべての国民は国民年金に加入します。

企業等に勤務する人や公務員は、国民年金の上乗せとして厚生年金に加入します。

「遺族基礎年金」は国民年金からの給付の1つであり、「遺族厚生年金」は厚生年金からの給付の1つです。

 国民年金厚生年金
老齢給付老齢基礎年金 付加年金老齢厚生年金
障害給付障害基礎年金障害厚生年金 障害手当金
遺族給付遺族基礎年金 寡婦年金  死亡一時金遺族厚生年金

それでは「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」についてくわしく見ていきましょう。

なお、遺族年金には細かい規定が定められており、そこまで説明すると複雑になるので、ここでは原則部分を説明します。

(1)遺族基礎年金とは

遺族基礎年金は、受給要件を満たしている場合、死亡した人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取ることができます。

遺族基礎年金は子どもがいないと受け取ることができないのです。

しかもここでいう子とは、18歳になった年度の3月31日までになります。

このように遺族基礎年金の受け取りは限定的なのです。

なお、子どもが複数いる場合には人数に応じた加算があります。

(2)遺族厚生年金とは

一方の遺族厚生年金は、受給要件を満たしている厚生年金の加入者や受給権者、受給者が死亡した場合に、その人によって生計を維持されていた妻、子や孫などが受け取ることができます。

遺族厚生年金は遺族基礎年金とは異なり、子どもがいない配偶者も受け取ることができます。

遺族厚生年金の受給年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3となります。

計算式で示すとこのようになります。

年金額=(①2003(平成15)年3月までの被保険者期間分+②2003(平成15)年4月以降の被保険者期間分)×4分の3

①の計算式=平均標準報酬月額×1,000分の7.125×被保険者期間の月数(2003(平成15)年3月まで)

②の計算式=平均標準報酬額×1,000分の5.481×被保険者期間の月数(2003(平成15)年4月以降)

おおまかに言うと、平均標準報酬月額とは、厚生年金の被保険者期間の平均月収で、ボーナスも加味したものが平均標準報酬額です。

平均標準報酬月額と平均標準報酬額については、別途正式な算出方法が定められています。

なお、所定の受給要件を満たせば、「中高齢寡婦加算」や「経過的寡婦加算」という規定によって、遺族厚生年金の受給年金額が増額されるケースもあります。

2.妻が受け取れる遺族厚生年金の金額

それでは妻が受け取れる遺族厚生年金はどれくらいなのでしょうか?

例として、夫が会社員で、同い年の妻が専業主婦として扶養されており、子どもは独立済みというケースで見てみましょう。

夫は会社員なので国民年金と厚生年金に加入しています。

夫の死亡により、国民年金からは遺族基礎年金、厚生年金からは遺族厚生年金の支給が考えられます。

しかし子どもはすでに独立済みなので、遺族基礎年金の支給はありません。

妻には遺族厚生年金のみの支給となります。

受給できる年金額は、夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。

計算式で示すとこのようになります。

年金額=(①2003(平成15)年3月までの被保険者期間分+②2003(平成15)年4月以降の被保険者期間分)×4分の3

①の計算式=平均標準報酬月額×1,000分の7.125×被保険者期間の月数(2003(平成15)年3月まで)

②の計算式=平均標準報酬額×1,000分の5.481×被保険者期間の月数(2003(平成15)年4月以降)

ここではわかりやすくするために「②の計算式」のみを用いて、

平均標準報酬額×1,000分の5.481×被保険者期間の月数×4分の3

として計算してみました。

ここに示した数値はイメージをつかんでいただくためのあくまでも目安です。

実際の受給年金額を計算するには、年金事務所に確認してください。

平均標準報酬額厚生年金の被保険者期間
20年25年30年35年40年
300,000円295,974円369,967円443,961円517,954円591,948円
400,000円394,632円493,290円591,948円690,606円789,264円

3.遺族厚生年金がもらえるなら、シニアには生命保険は不要?

先ほどの例の場合で、平均標準報酬額が400,000円で、厚生年金に40年加入していた夫が60歳で亡くなったケースで見てみましょう。

あくまでも目安ですが、妻が受け取れる遺族厚生年金は年額で789,264円です。

妻が90歳まで生きるとすると60歳から90歳までの30年間、毎年約80万円の遺族厚生年金が受け取れます。

受取総額は80万円×30年間で2,400万円です。

妻は65歳になれば自分の年金として、国民年金から老齢基礎年金がもらえます。

2024(令和6)年度の老齢基礎年金の年額は満額で約80万円です。

妻は65歳から90歳までの25年間、毎年80万円の老齢基礎年金がもらえるとすると、受取総額は80万円×25年間で2,000万円となります。

夫の遺族厚生年金2,400万円と妻自身の老齢基礎年金2,000万円を合計すれば4,400万円です。

夫の残した金融資産、例えば退職金などが1,000万円あるとすると合計で5,400万円となります。

この5,400万円を60歳から90歳までの30年間(360ヵ月)の生活費にあてるとすると、

5,400万円÷360ヵ月で、毎月15万円となります。

つまりこのケースでは、毎月の生活費が15万円までであれば、生命保険に加入する必要はないということになります。

しかし、実際には夫の残した全財産や妻自身の貯蓄、妻の老後のライフプランによって、生活するために必要な金額は変動します。

シニア世代になって、生命保険にはいくら加入しておけばいいのかを考える際には、遺族厚生年金のことも必ず考慮する必要があります。

2024.3.8