〈事 例〉
現金・預貯金を多く保有している70代のB夫婦は、相当の年齢になったので、自分たちの今後のことを考えて、相続の準備を始めました。
準備を進めていく中で、不動産会社から「現金のまま持っているより、土地を購入して賃貸アパートを建てれば相続税対策になる」と提案されました。
B夫婦はアパート建築に興味を持ち、早速検討を開始しました。
〈対 策〉
✅土地を購入して賃貸アパートの建築を決断するためには、さまざまな視点からの総合的な確認が必要
・節税の具体的な効果は?
・賃貸アパートの建築費はどのくらいなのか?
・賃貸アパートの建築にあたり、どのくらいの借入金が必要なのか(保有している現金・預貯金のうち夫婦の今後の生活費を考慮)
・賃貸料収入はどのくらい見込めるのか?
・空室リスクは?
・将来発生する賃貸アパートの修繕費はどのくらいを見込んでおけばよいのか?
・管理費はどのくらいかかるのか?
・賃貸アパートを売却する可能性はあるのか?
・B夫婦の相続人が賃貸アパートを引き継いだ後の問題点は? など
その結果、単純な節税対策ではなく、相続後も子どもが無理なく所有できるかどうかを重視して判断することにしました。
〈ポイント解説〉
自宅以外に土地を保有している人の中には、節税対策として、金融機関からの借入金により賃貸アパートなどの不動産を購入・建築をする人がたくさんいます。
相続税額の計算上、借入金は控除できますし、不動産も活用の仕方によっては評価額を下げることが可能です。
とはいえ、「借入金により不動産を購入・建築すれば相続税が下がる」という一面だけで判断するのは危険です。
節税対策のためだけに多額の借入金を抱えることは精神的な負担が大きいのです。
借入金は必ず返済しなければならないことを忘れてはいけません。
賃貸アパートの家賃収入が計画通りに得られない場合でも、借入金の返済は待ってくれません。
将来的に渡って確実にその家賃収入を確保できる保証はありません。
さらには賃貸アパートの経年劣化により修繕費が必ず発生します。
家賃収入が期待できなくなれば売却すればいい、との判断もありますが、こちらが望む価格で売却ができるとは限りません。
もしかしたら売却しても借入金を完済することができず、引き続き返済だけが続くことも考えられます。
不動産の価値は収益力で決まる時代です。
もし節税対策のために賃貸アパートを建てるのであれば、最終的な着地点となる「売却」のことまで考えてから実行してください。
売却価格は家賃収入次第と言っても過言ではありません。
相続税対策と相続税は別物です。
両方ともに考えていかなければなりません。
節税効果だけでなく、相続後の資産価値・収益性・換金性まで考える必要があります。
最も大切なことは、購入・建築した不動産を相続により引き継ぐ子どもに負担がかからないようにすることではないでしょうか。
2026.10.9.