〈状 況〉
Mさん(80歳)は総額3億円ほどの資産を保有していました。
不動産が中心でしたが、預貯金や株式などの金融資産も多く保有していました。
80歳を過ぎ、そろそろ相続について考えなければと思っていました。
資産総額は3億円、配偶者は5年前に亡くなりましたが、子どもが5人おり、節税や遺産分割で悩みました。
知り合いの税理士に相談したところ、生前贈与をすすめられました。
5人の子どもたちにはそれぞれ子どもがおり、子だけでなく孫にも生前贈与することにしました。
子や孫に毎年生前贈与を行っていけば、相続財産を着実に減らすことができ、節税になると考えました。
税理士に相談しながら、計画的に生前贈与を進めることにしました。
ところがMさんには数年前から物忘れの症状がありました。
年齢のせいだとあまり気にせずにいましたが、ここ最近は特に物忘れの症状がひどくなり、今日が何月何日なのか、自分はなぜここにいるのか、わからなくなることが多々ありました。
病院で検査を受けた結果、認知症と診断され、残念なことに認知症の症状が大分進行していました。
意思能力の低下により、贈与契約書の作成は困難と判断されてしまいました。
生前贈与を行うことができず、また円満な遺産分割のための遺言書を作成することもできませんでした。
Mさんが計画していた相続対策は途中で終了してしまいました。
その結果、多額の相続税が発生することになりました。
〈問題点〉
● 節税ができず相続税の負担が増える
● 子や孫たちへ自分が望む遺産の承継ができない
認知症により贈与契約書や遺言書を作成することができなくなったため、Mさんが望む相続対策が実行できなくなってしまいました。
生前贈与ができなくなり、相続財産を減らすことができず、遺産総額3億円に対する相続税を支払わなければならなくなってしまいました。
配偶者が生存していれば「配偶者の税額軽減の特例」を使って節税することができましたが、すでに亡くなっているため、特例を使うことはできません。
さらには、遺言書を作成することもできなくなり、遺産の承継もMさんが望むようにはできなくなってしまいました。
〈対 策〉
✅ 生前贈与
✅ 生命保険の活用
✅ 不動産整理
もっと早い段階からこのような対策を進めておくべきでした。
認知症になってしまうと、やりたいことができなくなってしまいます。
生前贈与は「相続対策の王道」と言われています。
自分の意思で特定の人に財産を渡すことができ、また相続財産を減らせるため節税になります。
長い年月をかけてより多くの人に生前贈与することで大きな効果を生みます。
生前贈与には、暦年贈与のほかにも相続時精算課税制度もあります。
生命保険に加入しておけば、その後契約者が認知症になっても、死亡保険金は確実に受取人に届きます。
もし、認知症になり自分が加入している生命保険がわからなくなっても、生命保険協会の生命保険契約照会制度で調べることができます。
不動産の継承については、相続では必ずと言っていいほど問題になります。
そのため誰が引き継ぐのかについては早めに決めておくべきです。
不動産は容易に分割することができないため、生命保険金を使って代償金を支払うことで決着させることもできます。
ただし、不動産の共同名義は相続後の維持管理でトラブルになることが多いので避けましょう。
2026.7.30.