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生命保険

80歳以上でもできる!生命保険を使った相続対策

80歳を超えると「もう生命保険は関係ない」と思われがちですが、実は相続対策の観点ではまだまだ活用できる余地があります。

特に、生命保険は相続税における非課税の特典を利用できたり、死亡保険金が受取人固有の財産として遺産分割のトラブルを避けやすかったりと、高齢期にこそ有効なポイントがあるのです。

「80歳以上でも可能な生命保険活用による相続対策」について、メリット・デメリット・具体的な活用法をていねいに解説しますので、ぜひ活用してください。

●80歳以上でも加入できる生命保険はあるの?

一般的に生命保険は、70〜80歳前後で新規に加入できる年齢の上限を迎える商品が多いです。

ですが、80歳以上でも加入できる商品は確かに存在し、たとえば次のようなものがあります。

・一時払終身保険

まとまった資金を一度に預け入れることで、一生涯の死亡保障を確保できる

さらに掛け捨てではないので貯蓄性(解約返戻金)がある

・少額短期保険

葬儀費用などをカバーすることを目的として、割安な保険料で少額の死亡保障を確保できる(高齢者専用プランもあり)

医療保険や長期の定期保険は難しいですが、「相続対策目的の死亡保障」であれば、80歳以上でも加入できる生命保険があります。

●相続対策に生命保険を活用するメリット

相続対策において生命保険だけが持っているメリットを紹介します。

・非課税の特典

相続税では、死亡保険金のうち「500万円 × 法定相続人の数」までの金額は非課税という特典があります。

この特典を適用するためには契約形態の要件を満たす必要がありますが、要件を満たせば、もちろん80歳以上でも適用することができます。

そのまま現預金で持っていると全額が相続税の対象になってしまいます。

生命保険に加入することで相続税対策に役立ちます。

・死亡保険金は受取人固有の財産

死亡保険金は受取人固有の財産とされているので、原則として遺産分割協議の対象外です。

そのため死亡保険金受取人として指定すれば、特定の相続人に確実に資金を渡すことができます。

死亡保険金受取人は契約の途中で変更することもでき、渡す保険金の額も変更することができるので、相続争いを避ける効果が期待できます。

・速やかに現金を確保

相続財産に不動産や株式が多いと分割することが難しく、かといって簡単に売却することもできません。

相続財産に現預金が少ないと遺産分割がなかなか決着しません。

死亡保険金は、請求書類が保険会社に到着してから1週間程度で現金で支払われます。

受取人が速やかに現金を手にすることができるので、葬儀費用の支払い、遺族の生活資金、そして相続税の納税資金を確保することができます。

●80歳以上での生命保険加入の注意点

メリットだけではなく、注意点についても確認しておきましょう。

・保険料が高額

生命保険の保険料は年齢が高くなるほど高額になります。

80歳以上であれば保険料はかなり高額です。

そのため解約してもお金が戻ってこない掛け捨て型の商品に加入するのは現実的でなく、貯蓄性(解約返戻金)のある一時払型が基本になります。

・健康状態による制限

80歳以上になると持病がある人も多く、健康告知や医師の診査が必要な場合、状況によっては加入が難しいことがあります。

また加入できたとしても、割増保険料をとられたり、保険金の支払いに条件を付けられたりすることもあります。

なお、一時払型の商品であれば、健康告知や医師の診査が不要のものがあります。

持病を抱えていて健康状態に不安のある人は、一時払型の商品を検討するとよいでしょう。

・商品リスク

最近人気のある外貨建て商品や変額商品は、運用リスクや為替リスクなどがあるため注意が必要です。

運用実績によっては、元本割れなど大きなリスクを被る可能性があります。

外貨建て商品や変額商品は、基本的には長期で運用を行うものであり、長期の運用期間によってリスクの回避を行います。

80歳以上の人が長期運用をすることは適切ではなく、シンプルな円建ての一時払終身保険が安心です。

●活用法の具体例

80歳以上の人にとって、生命保険はどのように活用できるのか見てみましょう。

・相続税納税資金を確保

一時払終身保険に加入する。

保険料を一括で支払うことによって相続財産を移転させ、相続税の負担を軽減し、保険金(現金)を相続人へ確実に渡して、相続税納税資金を確保する。

一時払終身保険では、健康告知や医師の診査がない商品も多く、持病があっても加入することができる。

・特定の相続人へ確実に資金を渡す

死亡保険金は受取人固有の財産であり、原則として遺産分割協議の対象外となるため、特定の相続人に確実に資金を渡すことができる。

たとえば、自分の介護を担ってくれた長女に保険金を渡すことで公平感を持たせることができる。

・自分の葬儀費用を確保

保険料が安い少額短期保険を利用して、自分の葬儀費用をカバーする。

自分の葬儀費用は自分で準備することで、自分が亡くなったあとの遺族の負担を軽減することができる。

●他の相続対策との比較

生命保険では「現金を速やかに受け取れる」ということが特に注目すべき点です。

生命保険以外の相続対策である生前贈与と遺言書と比較してみましょう。

・生前贈与

生前贈与は、相続対策の王道と言われています。

生前贈与を行うと贈与税がかかってくるのですが、贈与税には年間110万円までの非課税額があります。

これにより1年間に110万円までは、贈与税を課税されずに現金などを贈与することができます。

この非課税額を活用して、多くの財産を生前贈与するとなると、かなりの時間がかかります。

そのため長期間に渡って計画的に実行する必要があります。

なお、最終的には相続税で精算されますが、年間110万円を除いた累計2,500万円まで非課税で贈与することができる相続時精算課税制度を活用する方法もあります。

・遺言書

遺言書は生前に自分の意思を遺すことができるため、円満な遺産分割には欠かせない存在です。

遺産の分割方法を指定することはできますが、相続する財産によっては、現金化するまでに手間がかかる場合もあるので注意が必要です。

代表的な遺言書として、公正証書遺言と自筆証書遺言があります。

公証役場で法律にくわしい公証人が作成するため、手間や費用がかかりますが、公正証書遺言の方がよく利用されています。

自筆証書遺言は、すぐに自分ひとりで作成することができ、あまり費用もかからないという長所がある反面、形式不備により無効になったり、紛失や偽造、廃棄のおそれがあります。

また、家庭裁判所での検認が必要です。

このような短所を無くすために「自筆証書遺言保管制度」が設けられ、自筆証書遺言を利用する人も増えてきました。

●まとめ

以上、80歳以上でも可能な生命保険活用による相続対策について解説しました。

80歳以上であっても、生命保険を活用した相続対策はまだまだ可能です。

特に一時払終身保険や少額短期保険を活用すれば、相続税における非課税の特典を有効活用し、遺族の生活資金や相続税納税資金を確保できるのが魅力です。

ただし、加入できる商品や条件は限られるため、検討する際は専門家(FP・税理士など)に相談し、自分や家族の状況に合った方法を選ぶことが重要です。

2025.9.12

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生命保険

外貨建て生命保険を相続対策に活用するメリットと注意点

円建てよりも運用利率が高いため、外貨建てによる運用が人気です。

生命保険にも保険料を外貨で支払って運用する外貨建て商品があります。

生命保険は相続対策に強い金融商品ですが、メリットがある一方で、デメリットや注意しなければならないこともあります。

外貨建て生命保険を相続対策に活用する際の、他の商品との比較、活用のポイントまで含めて解説しました。

ご自身の相続対策に外貨建て生命保険は有効なのか、確認してみてください。

●外貨建て生命保険とは?

外貨建て生命保険とは、米ドルや豪ドルなどの外貨で保険料を払い込み、解約返戻金や死亡保険金も外貨で受け取るタイプの生命保険です。

円建て保険に比べて運用利率が高いため、長期運用により、資金や保障の増加を期待できます。

ただし、運用リスクのほかに、円建て保険にはない「為替変動」の影響を受けるという点に注意が必要です。

●相続対策としてのメリット

外貨建て生命保険は相続対策に有効活用することができます。

・死亡保険金の非課税の特典が使える

要件を満たせば、相続人が受け取る死亡保険金のうち「500万円 × 法定相続人の数」までの金額が非課税となります。

これにより、外貨建てによる運用で増加した資金を、効率的に相続財産に組み込むことが可能です。

・資産を増やしながら相続の準備ができる

円建てよりも高い利率で運用できるため、長期的には資産形成効果が期待できます。

預金で保有するよりも有利に資産を残せる可能性があります。

・遺産分割や納税資金準備に役立つ

死亡保険金は受取人を指定できるため、残したい特定の相続人に、確実に資金を渡すことができます。

また、相続税の納税資金を準備するのにも役立ちます。

●デメリットと注意点

一方で、外貨建て生命保険にはリスクや注意点もあります。

・為替変動リスク

円高局面では受け取れる金額が目減りする可能性があります。

たとえば、1ドル=140円のときに契約した保険が、相続時に1ドル=120円になれば、同じドル建て金額でも円換算額は減少します。

・解約時の元本割れリスク

外貨建て保険は、契約後に早期解約すると、解約返戻金が払込保険料を下回ることが多く、

元本割れリスクがあります。

短期での運用効果をねらっている人には向いていません。

・相続税は円換算

相続税の計算は、外貨建てであっても「円換算」で行われます。

相続発生時点の為替レートにより計算されるため、課税額が変動することに注意が必要です。

・換金コストや手続き

死亡保険金を外貨のまま受け取った場合、相続人にとっては外貨を円に換える手間や為替手数料が発生します。

●他の商品との比較

外貨建て生命保険との違いを把握しておきましょう。

・円建て生命保険との違い

円建て生命保険は、為替リスクがなく安全性が高いですが、運用利率が外貨建て生命保険に比べて低く抑えられています。

外貨建て生命保険は、円建て生命保険よりも運用利率が高いため、資産運用効果が期待できる反面、円建て生命保険にはない為替変動リスクを抱えています。

・外貨預金や投資信託との違い

保険には死亡保障の最低保証があり、「死亡保障+運用」がセットになっている点が最大の違いです。

・不動産との違い

不動産は流動性がなく分割が難しい資産ですが、生命保険は死亡保険金を速やかに現金で受け取れるため、流動性が高く、分割も容易です。

●活用のポイント

外貨建て生命保険を相続対策で活用する際は、次の点を意識しましょう。

・相続財産の規模や相続人の数に応じて適切な保険金額を設定する

・為替変動リスクを理解し、長期的な運用を前提とする

・保険料を一時払するか積立払するかをライフプランに合わせて選ぶ

・相続税シミュレーションを行い、専門家(FP・税理士など)のアドバイスを受ける

●まとめ

外貨建て生命保険は「保障(死亡保障の最低保証あり)+資産運用」を兼ね備えた商品です。

高い運用利率により、円建て生命保険よりも資金の増加が期待できます。

相続対策として活用すれば、非課税の特典を受けたり、遺産分割や納税資金準備に役立ちます。

ただし、為替変動リスクや元本割れリスクをしっかりと理解したうえで、専門家と相談しながら実行することが成功のカギとなります。

2025.9.2

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生命保険

生命保険で相続対策 - 500万円の非課税額を徹底解説

相続対策として生命保険を活用するメリットのひとつに「死亡保険金の非課税の特典」があります。

これは現預金や不動産にはない生命保険独特のもので、相続税の負担を軽減するうえで非常に効果があります。

●死亡保険金の非課税の特典とは

相続税法では、受け取った死亡保険金のうち、「500万円 × 法定相続人の数」までの金額は、相続税の課税対象になりません。

なお、相続税の課税対象にならないのは、他の保険商品すべての死亡保険金と合算して、「500万円 × 法定相続人の数」までの金額です。

●民法では、死亡保険金は本来の相続財産ではないが、相続税法では「みなし相続財産」

少し難しい話になりすみません。

民法では、死亡保険金は本来の相続財産ではありません。

死亡保険金は受取人固有の財産となり、原則として遺産分割協議の対象外です。

ただし相続税法では、受け取った死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。

なお、相続放棄をしても死亡保険金を受け取ることができます。

受け取ることはできますが、「みなし相続財産」として相続税が課税されます。

この際、死亡保険金の非課税の特典は適用できないので注意が必要です。

●死亡保険金の非課税の特典を受けるための要件

死亡保険金の非課税の特典は、契約者と被保険者が同一で、かつ死亡保険金受取人が相続人である保険契約に限り適用することができます。

もし契約者と被保険者が同一で、死亡保険金受取人が相続人以外であった場合にはどうなるのでしょうか?

相続ではなく遺贈として相続税が課税されますが、死亡保険金の非課税の特典を適用することはできません。

死亡保険金の非課税の特典を受けるためには契約形態に注意が必要です。

●デメリットや注意点

・保険料が高額のため負担が重い(相続対策は高齢になってから始める人が多い)

・健康状態によっては、生命保険に加入できないこともある(相続対策は高齢になってから始める人が多い)

・契約者と被保険者が同一であっても、死亡保険金受取人が「相続人以外」であると非課税の特典が使えない

・非課税額の計算における「法定相続人の数」には、相続放棄した人も含めることに注意
 (ただし、相続放棄をした人が受け取った死亡保険金には非課税の特典は適用できない)

●活用例

法定相続人が妻・長女・長男の3人であれば 、受け取った死亡保険金のうち1,500万円(500万円×3人)までが非課税となります。


法定相続人が3人で、死亡保険金を3,000万円受け取ったケースで考えてみましょう。

非課税額:500万円 × 3人 = 1,500万円

相続税の課税対象額:3,000万円 - 1,500万円 = 1,500万円

このように500万円の非課税額を使うことで、相続税の課税対象額を半分に減らせるのです。


もうひとつ、一時払終身保険に保険金額1,500万円で加入したケースで考えてみましょう。

70歳以上で一時払終身保険に加入した場合の保険料は、保険金額の1,500万円を少し下回る金額です。

もし現預金で1,500万円保有していれば、全額が相続税の課税対象になります。

一時払終身保険に加入することで、相続財産を1,500万円減らして、非課税の特典を生かしながら、相続人に資産を継承することができます。

特に相続税がギリギリでかかる場合には有効な手段となります。

なお、相続税の課税対象にならないのは、他の保険商品すべての死亡保険金と合算して、「500万円 × 法定相続人の数」までの金額であることには注意しましょう。

2025.8.28

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生命保険

相続対策で注目される「一括払い生命保険」とは?

「相続税がかかりそうだけれど、預金のまま残すと税負担が重くなるのでは?」

そんな不安を持つ人に活用されているのが 一括払い生命保険(=一時払終身保険) です。

まとまった資金を一度に払い込み、一生涯の保障を確保できる仕組みで、相続対策・相続税対策・資産承継 の手段として人気があります。

一括払い生命保険(=一時払終身保険)の仕組み、メリット、デメリット・注意点をくわしく解説します。

相続対策のひとつの手段としてお役立てください。

1.一括払い生命保険の仕組み

一括払い生命保険(=一時払終身保険)」は、契約時に保険料を一括で支払い、以後の払い込みは不要です。

保障は一生涯続き、被保険者が亡くなったときに、死亡保険金が指定した受取人へ、直接すみやかに支払われます。

また、解約返戻金が期間の経過に応じて増加していくという貯蓄機能もあります。

預金としてそのまま残すよりも スムーズな資産移転と相続税軽減効果が期待できます。

2.相続対策としてのメリット

一括払い生命保険を相続対策に活用するメリットを4つ紹介します。

(1)死亡保険金の非課税の特典がある

相続税法では、受け取った死亡保険金のうち、「500万円×法定相続人の数」までの金額が非課税という特典があります。

たとえば、法定相続人が3人なら1,500万円(500万円×3人)まで非課税です。

預金のまま残すより、相続財産を圧縮できるため、相続税の負担を軽減することができます。

(2)死亡保険金受取人を指定できる

死亡保険金は受取人固有の財産となるため、原則として遺産分割協議の対象外です。

そのため、死亡保険金受取人に指定すれば、特定の相続人に確実に資金を渡すことができます。

(3)口座凍結を回避し、早期に資金が確保できる

金融機関は、預金口座の名義人が亡くなったことがわかると、直ちに口座を凍結します。

凍結した口座からお金を引き出すには、遺産分割協議書や遺言書などで、誰がその預金を引き継ぐのかを明らかにする必要があり、相当な時間がかかることが予想されます。

死亡保険金は、請求書類が保険会社に到着してから、通常1週間程度で現金で受け取れるため、葬儀費用の支払いや遺族の当面の生活費の確保に役立ちます。

(4)貯蓄効果も期待できる

払い込んだ保険料以上の死亡保険金を受け取ることができ、また解約返戻金も期間の経過に応じて増加していくので、資産形成と相続対策を両立することができます。

3.デメリット・注意点

一括払い生命保険を相続対策に活用するメリットとあわせて、デメリット・注意点についても把握しておく必要があります。

●保険料を一括で支払うためのまとまった資金が必要(最低数百万円〜)

●契約後短期間のうちに解約すると 解約返戻金が保険料を下回る(元本割れとなる)

●死亡保険金受取人を一部の相続人だけにすると 遺産分割協議で不公平感が出る可能性がある

●健康状態によっては、加入できない場合がある

4.一括払い生命保険が向いている人

どのような人が一括払い生命保険に向いているのか?

相続対策における一括払い生命保険のメリット、デメリット・注意点を踏まえて、ピックアップしてみました。

●相続財産を移転させて、相続税の負担を軽減したい人

●相続財産の評価額を相続税の基礎控除額以下に引き下げて、相続税が課税されないようにしたい人

●老後資金を考慮しても余裕のある資金を保有しており、相続対策として活用したい人

●特定の相続人に確実に資金を渡したい人

5.他の相続対策との比較

それぞれのメリット・デメリットを整理してみました。

対策方法    メリット   デメリット
一括払い生命保険資金移転がスムーズ 非課税の特典あり資金拘束
預金流動性が高い全額が相続税の課税対象 口座凍結リスク
生前贈与毎年110万円まで非課税長期的な計画が必要
不動産活用相続税評価額を下げやすい流動性が低く維持費も必要

6.まとめ

以上、相続対策で注目される「一括払い生命保険」について、仕組み、メリット、デメリット・注意点について解説しました。

一括払い生命保険(=一時払終身保険)は相続対策のための有効な選択肢ですが、メリットだけでなく、デメリット・注意点についてもしっかりと理解しておく必要があります。

生命保険が他の金融商品に比べて「相続に強い」商品であることを理解していただけたと思います。

2025.8.27

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生命保険

生命保険を相続対策に活用する際のデメリットや注意点

相続対策として「生命保険」は広く利用されています。

死亡保険金には 「500万円×法定相続人の数」までの非課税額の特典があり、しかも請求後速やかに現金で受け取れるため、遺産分割の手段や相続税の納税資金の確保として有効です。

しかし、メリットの裏にはデメリットや注意点もあります。

生命保険を相続対策に活用する際のデメリットや注意点を整理しました。

理解を深めていただき、トラブルや損失を防いでください。

1.おさえておいていただきたいデメリットや注意点

デメリットや注意点として考えられるものが5つあります。

具体的に見ていきましょう。

(1)保険料負担の重さ

一般的に相続対策を考え始めるのは70代以降になってからが多いです。

高齢者になって生命保険に加入すると、保険料が高額になります。

特に一時払終身保険の場合、保険料を一括して支払う必要があるため、手元の資金が一度に大きく減少します。

無理な保険料負担は、老後の生活資金を圧迫しかねません。

相続対策と老後資金は、バランスをよく考えて実行する必要があります。

(2)元本割れのリスク

終身保険は、一生涯の保障を得ながら、解約返戻金も増加していく、保障と貯蓄を兼ね備えた相続対策の代表的な商品です。

ただし、契約後数年間は解約返戻金が保険料を下回ります。

つまり元本割れするリスクがあるということです。

相続対策目的で生命保険に加入しても、途中で資金が必要になることは十分に考えられます。

その場合、解約返戻金を充当するということになるのですが、元本割れリスクがあり、解約を繰り返すことで大きな損失につながる可能性もあります。

生命保険を相続対策に活用する場合には、老後資金の資金繰りにも着目しながら実行することが大切です。

(3) 受取人指定によるリスク

死亡保険金は「受取人固有の財産」となりますので、原則として遺産分割協議の対象外です。

そのため死亡保険金受取人を指定して、特定の相続人に確実のお金を渡すことができます。

ただし、特定の相続人だけに保険金を渡すと、他の相続人に「不公平だ」と感じさせ、相続トラブルの火種になることが考えられます。

相続財産の内容を良く分析して、不動産など分割しにくい財産が多い場合には、相続トラブルを起こさないように、保険金の受取人や受取額をうまく調整する必要があります。

(4) 死亡保険金非課税額の限界

相続税における、死亡保険金の非課税額(500万円×法定相続人の数)は有効ですが、それを超える死亡保険金は課税対象となることに注意が必要です。

死亡保険金の非課税額は、他の保険商品すべての死亡保険金と合算して、(500万円×法定相続人の数)までの金額が非課税となります。

受取った死亡保険金の総額が大きい場合、十分な税負担軽減効果を得られません。

また、死亡保険金の非課税額は、契約者と被保険者が同一で、死亡保険金受取人が相続人である契約に限り適用できるということにも注意が必要です。

(5) 契約形態を誤ると課税リスクが増大

生命保険では、契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって、課税される税の種類が異なります。

・契約者=被保険者:夫 受取人:相続人 → 相続税(死亡保険金非課税額あり)

・契約者=被保険者:夫 受取人:相続人以外 → 相続税(死亡保険金非課税なし)

・契約者=子、被保険者=父、受取人=子 → 所得税(一時所得)・住民性

・契約者=父、被保険者=母、受取人=子 → 贈与税

贈与税は相続税よりも税負担が重くなります。

このように契約形態によっては、本来より不利な税金がかかる可能性があるため、契約時には保険にくわしいFPや税理士などの専門家に確認が必須です。

2.実際によくある失敗例

これらはみな、事前にデメリットを理解していれば回避できたケースです。

〈ケース1〉

相続税の負担を減らす対策として相続財産を移換するために、一時払終身保険に加入し、高額な保険料をまとめて支払った。

数年後、脳梗塞を患い、多額の医療費が必要となった。

一時払終身保険の保険料を支払ったことにより、手元の資金が少なくなってしまった。

医療費の支払いにあてるために一時払終身保険を解約したが、契約後数年しか経っていなかったため、元本割れとなってしまった。

〈ケース2〉

相続人は、長女、長男、二男の子ども3人。

二男を死亡保険金受取人に指定して保険金を渡し、長女と長男には他の財産を分けてもらうようにした。

実際に相続が起きて、相続財産は不動産など分割しにくい財産がほとんどであることが判明し、遺産分割がうまくできず揉めた。

〈ケース3〉

生命保険から受け取る死亡保険金は相続税の対象だと思っていたが、相続税の申告納税をした後、税務署から相続税ではなく、贈与税の課税対象となる旨の指摘を受けた。

税務署に確認すると、契約者:父 被保険者:母 死亡保険金受取人:子という契約形態では、相続税ではなく、贈与税の課税対象になると回答があった。

相続税の申告は税理士に委託していたが、その税理士も誤った判断をしていた。

3.デメリットを回避するためのポイント

生命保険を相続対策に活用する場合には、以下の点に注意しましょう。

●相続税対策のことを優先したために、保険料負担が老後生活を圧迫しないよう設計する

●死亡保険金受取人の指定は公平性に配慮する

●受け取った死亡保険金に対する税の種類を間違わないために、契約形態について保険にくわしいFPや税理士などの専門家に確認しておく

●生命保険だけに頼らず、遺言、生前贈与、信託などもあわせて活用する

4.まとめ

以上、生命保険を相続対策に活用する際のデメリットや注意点について解説しました。

生命保険は相続対策において有効な手段ですが、デメリットやリスクも無視できません。

「保険料負担」「元本割れ」「不公平感」「課税リスク」といった注意点を理解した上で活用することが大切です。

相続は家庭ごとに事情が異なります。

生命保険を相続対策に活用する場合は、必ず保険にくわしいFPや税理士などの専門家に相談し、自分に合った方法を選びましょう。

2025.8.25

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生命保険

相続対策に活用できる生命保険|商品と選び方

相続では「遺産分割で揉める」「納税資金が足りない」といった問題が多く発生します。

こうしたトラブルを防ぐ有効な手段が生命保険です。

相続対策に生命保険を活用するメリット、活用される商品と選び方について解説しています。

自分に適した生命保険を活用した相続対策プランを作成してください。

1.相続対策に生命保険を活用するメリット

相続対策に活用できる生命保険商品と選び方を理解する前に、相続対策に生命保険を活用するメリットについて確認しておきましょう。

(1)死亡保険金非課税額が活用できる

死亡保険金には非課税額の特典があります。

受取った死亡保険金のうち、「500万円×法定相続人の数」までの金額は、相続税が非課税となります。

たとえば、法定相続人が配偶者と子2人であれば、死亡保険金を1,500万円(500万円×3人)まで非課税で受け取ることができます。

(2)速やかに現金を確保できる

死亡保険金は、請求書類が保険会社に到着してから1週間程度で、速やかに現金で受け取ることができます。

金融機関は、預金口座の名義人が亡くなったことが分かると、直ちに口座を凍結します。

凍結した口座からお金を引き出すには、遺産分割協議書や遺言書などで、誰がその預金を引き継ぐのかを明らかにする必要があるため、相当な時間がかかることが予想されます。

相続発生後は、葬儀費用の支払いや遺族の当面の生活費など多くの出費があります。

また、相続税は亡くなってから10ヵ月以内に、原則として現金で納付しなければなりません。

遺族の生活費や相続税の納税資金をすぐに確保できるのは大きな安心材料です。

(3)特定の相続人に確実に保険金を渡すことができる

生命保険では死亡保険金受取人を指定します(途中で変更することもできます)。

死亡保険金は受取人固有の財産であるため、原則として遺産分割協議の対象外となります。

遺産分割協議を避けて、財産を渡したい人に直接承継することができます。

(4)遺産分割トラブルを防止することができる

相続財産のほとんどが不動産や株式などの分割しにくいものであると、遺産分割トラブルが起こりやすくなります。

死亡保険金は速やかに現金で受け取れるため、不動産や株式などと併せて遺産分割を行えば、円満な相続を実現しやすくなります。

2.相続対策で活用される生命保険商品

代表的なものを3つ紹介します。

(1)一時払終身保険

保険料を一括で支払います。

死亡保障が一生涯続くため、相続対策の中心的な商品です。

現金で持っていればそのまま全額が相続財産となりますが、生命保険に換えることで相続財産を圧縮し、継承することができます。

相続財産の圧縮により、相続税の負担を軽減することができます。

また、貯蓄機能もあるため、期間の経過とともに解約返戻金は増加し、保険料を上回ります。

老後資金など資金繰りの問題が発生した場合には、解約返戻金を充当することができます。

なお、契約後短期間で解約をすると、解約返戻金が保険料を下回り、元本割れを起こすことがあるので注意が必要です。

(2)変額保険

保険料の運用実績によって、将来受け取る保険金や解約返戻金が変動する保険です。

運用実績によっては、より多くの資金が受け取れることを期待できます。

運用方法は指定の範囲内で選択することができますが、運用コストがかかります。

インフレに対応しながら、長期的な視点で相続対策を行いたい人に適しています。

保険金額は最低保証されていますが、解約返戻金や満期保険金には最低保証はありません。

利用にあたっては、自分の運用リスク許容度をしっかりと判断する必要があります。

(3)年金保険

契約から一定期間経過後、老後資金として年金を受け取りながら、亡くなった時には、まだ受け取っていない年金の原資を給付金として承継することができます。

老後と相続の両立を考える人におすすめです。

3.活用例

例)配偶者と子ども2人の場合

法定相続人は3人  →  死亡保険金非課税額は 500万円×3人=1,500万円

たとえば、2,000万円の資金を一時払終身保険に移換すると、保険金のうち1,500万円は非課税で相続人に承継することができます。

残りも保険金として現金化されるため、相続税の納税資金や葬儀費用の支払い、遺族の当面の生活費などに充てることができます。

相続財産の圧縮を行い、相続税の負担を軽減させ、死亡保険金の非課税の特典を受けながら相続人に保険金を継承し、相続税の納税資金や当面の支出に対応するという効果を得ることができるのです。

4.商品を選ぶ際の注意点

相続対策にはどの生命保険商品を選べばよいのか、自分に適した商品を選ぶための注意点について確認しておきましょう。

(1)資産の流動性が低くなる場合がある

保険料を一括で支払う一時払終身保険では、資金を生命保険に移換することで、相続財産を減らし、相続税の負担を軽減することができます。

ただし、手元にある資金がまとまって無くなってしまうので、資産の流動性が低くなることが考えられます。

相続対策として、相続財産を減らすことも重要ですが、老後資金が無くなってしまうのでは本末転倒です。

相続対策は老後資金とのバランスを考えて実行することが大切です。

(2)短期間で解約すると解約返戻金が大幅に減る場合がある

相続対策として保険料を一括払いして一時払終身保険に加入した後、老後資金の資金繰りから、資金が必要になることが考えられます。

一時払終身保険では、期間の経過に応じて解約返戻金が増加していきますが、契約後短期間で解約すると、解約返戻金が保険料を下回り、元本割れを起こす可能性があります。

一時払終身保険では、相続対策をしながら、保障と貯蓄に備えることができる魅力的な商品です。

契約後短期間で解約するリスクはないか、契約時によく検討する必要があります。

(3)税負担の軽減だけを目的に加入すると、思わぬ課税や資金繰りの問題を招く場合がある

生命保険では、誰が契約者・被保管者・死亡保険金受取人になるかによって、課税される税の種類が変わります。

相続対策でよく見られる、相続税における死亡保険金非課税の特典を適用するのであれば、契約者と被保険者を同一で、死亡保険金受取人を相続人にしなければなりません。

受取人が相続人以外であると、相続税が課税されますが、死亡保険金非課税の特典を適用することができません。

なお、死亡保険金非課税額の適用は、他の保険商品すべての死亡保険金と合算して、「500万円×法定相続人の数」までの金額となります。

また、契約者:夫、被保険者:母、死亡保険金受取人:子という契約形態の場合、相続税ではなく贈与税が課税されます。

贈与税は相続税よりも税負担が重くなっています。

このように、死亡保険金非課税額の適用を受けるためには、要件を満たす必要があります。

また、契約者・被保険者・死亡保険金受取人の組み合わせによって課税関係が異なってきますので注意しましょう。

5.まとめ

以上、相続対策に活用できる生命保険|商品と選び方について解説しました。

生命保険は「非課税額の適用」「速やかな現金の確保」「遺産分割トラブルの回避」に役立つ、相続対策の有力な手段です。

相続は家族構成や資産状況によって最適な方法が変わります。

活用する商品の特徴をよく理解し、FPや税理士などの専門家と相談しながら自分に適したプランを選ぶことで、円満で安心のできる相続を実現することができます。

2025.8.20

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生命保険

相続対策に役立つ生命保険の基礎知識と活用法

相続では「争族」や「納税資金不足」といった問題が発生しがちです。

特に、不動産や株式など流動性の低い資産が多い場合には、遺産分割トラブルが発生しやすく、また納税資金を準備するのが難しくなります。

この問題を解決するための有効な手段のひとつが生命保険の活用です。

死亡保険金は、速やかに現金で受け取れるため、遺産分割トラブルの回避や納税資金の準備に役立ちます。

また、相続税における非課税の特典を活用すれば、税負担を軽減することができます。

相続対策における生命保険の基礎知識を理解して、活用法をマスターしてください。

1.相続の基礎知識

相続対策に生命保険が役に立つことを理解していただくために、まずは相続の基礎知識を整理してみましょう。

(1)相続とは

相続とは、人が亡くなったときに、亡くなった人の財産を、相続人である配偶者や子どもなどが引き継ぐことです。

(2)相続人になる人

亡くなった人の財産を受け継ぐ人を「相続人」、亡くなった人を「被相続人」といいます。

誰が相続人になるのかは民法で決まっています。

〈相続人となる人〉

 対象者
配偶者常に相続人になる
第1順位
第2順位父母
第3順位兄弟姉妹

(3)財産を分ける割合

相続人が決まったら、次はどのように財産を分けるかを決めます。

遺言書がある場合は、原則として遺言書に書いてある分け方が優先されます。

遺言書がない場合は、相続人全員で財産の分け方を話し合います(遺産分割協議)。

遺言書がない場合や、相続人同士で話し合いがまとまらない場合の目安として、民法ではそれぞれが相続する財産の割合が決められています(法定相続分)。

〈法定相続分〉

     相続人の組み合わせ       法定相続分
配偶者のみ全部
子のみ全部を子で分ける
父母のみ全部を父母で分ける
兄弟姉妹のみ全部を兄弟姉妹で分ける
配偶者と子配偶者に1/2、子に1/2
配偶者と父母配偶者に2/3、父母に1/3
配偶者と兄弟姉妹配偶者に3/4、兄弟姉妹に1/4

同じ順位の人が2人以上いる場合は、その人数で分けます。

なお、法定相続分はあくまでも目安であって、相続人全員が合意すれば、法定相続分どおりに分けなくても問題ありません。

●遺留分に注意

遺言書がある場合には、そこに書かれた分け方が優先されますが、1人に全財産を相続させるなどの内容では他の遺族が困ることがあります。

そこで一定の相続人が最低限相続できる相続分が定められています(遺留分)。

遺留分の権利は配偶者と子、そして父母に保証されています。

〈遺留分の割合〉

        相続人        遺留分
配偶者、子法定相続分の半分
父母(被相続人に配偶者がいる場合)法定相続分の半分
父母(相続人が父母のみの場合)法定相続分の1/3
兄弟姉妹なし

(4)相続税

相続税は、相続財産の総額のうち基礎控除額を超える分について課税されます。

基礎控除額=3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

相続財産には、現金や預貯金だけでなく、不動産や有価証券、死亡保険金なども含まれます。

また、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。

2.相続対策における生命保険の活用例

では相続対策で生命保険をどのように活用するのか具体的に解説します。

(1)死亡保険金非課税額のフル活用

死亡保険金は、受取人固有の財産として取り扱われ、民法上は本来の相続財産ではないため原則として遺産分割協議の対象外となります。

しかし、死亡保険金を受け取ると、相続税法上はみなし相続財産として相続税が課税されます。

ただし、死亡保険金には非課税の特典があり、受け取った死亡保険金のうち「500万円×法定相続人の数」までの金額は非課税となります。

この非課税の特典を活用すれば、税負担を抑えながら財産をのこすことができます。

(2)納税資金の確保

相続税は、亡くなってから10ヵ月以内に、原則として現金で納付しなければなりません。

もし相続財産が不動産や株式など分割しにくい資産が中心であると、納税資金を捻出するために売却を余儀なくされることも考えられます。

生命保険を活用すれば、死亡保険金は請求書類が保険会社に到着してから1週間程度で速やかに現金で受け取ることができるため、このような事態を回避することができます。

また、相続税がかからない場合であっても、葬儀費用の支払いや遺族の当面の生活資金としてすぐに現金必要になるため、生命保険が役に立ちます。

(3)遺産分割トラブルの回避が可能

死亡保険金は、受取人固有の財産として取り扱われるため、原則として遺産分割協議の対象外となります。

契約時に受取人を指定するため(途中で変更も可能)、確実に特定の相続人に資金を渡すことができます。

不動産や株式など分割しにくい資産の代わりに、遺産分割がしやすくなります。

3.注意点:契約形態と税務リスク

生命保険では、「契約者」「被保険者」「死亡保険金受取人」の関係によって税の種類(相続税、所得税・住民税、贈与税)が異なりますので注意が必要です。

なお贈与税は、相続税および所得税・住民税に比べて税負担が大きくなっています。

〈死亡保険金を受け取った場合の課税関係〉

契約者 被保険者死亡保険金
受取人
税の種類備考
    夫    夫    相続人    相続税・相続により取得したものとみなされる ・死亡保険金の非課税の特典あり
    夫    夫    相続人以外    相続税・遺贈により取得したものとみなされる ・死亡保険金の非課税の特典なし
所得税
(一時所得) ・
住民税
 
贈与税

4.まとめ

以上、相続対策における生命保険の基礎知識と活用法について解説しました。

生命保険は、相続対策において「税負担を軽減する」「現金を速やかに確保する」「遺産分割トラブルを回避する」という3つの役割を果たすことができます。

ただし、契約形態を誤ると、想定外の課税が発生する可能性もあります。

相続対策として生命保険を活用する場合は、FPや税理士などの専門家と相談しながら、家族構成や資産状況に合ったプランを設計しましょう。

2025.8.17

カテゴリー
生命保険

相続対策に生命保険がおすすめの理由と加入時の注意点を徹底解説

相続税の負担や遺産分割のトラブルは、多くの家庭で起こり得る問題です。

そのような中、「生命保険」は相続対策として非常に有効な手段のひとつです。 

生命保険が相続対策に向いている理由や、おすすめの保険タイプ、加入時の注意点までわかりやすく解説します。

生命保険が他の金融商品に比べて「相続に強い」商品であることがおわかりいただけます。

1.相続対策に生命保険をおすすめする3つの理由

相続対策において、生命保険には他の金融商品にはない魅力があります。

(1)相続税の非課税の特典がある

受け取った死亡保険金のうち「500万円 × 法定相続人の数」までの金額は、相続税が非課税という税制上の特典があります。 

例えば、法定相続人が妻・長女・長男の3人であれば、死亡保険金のうち1,500万円(500万円×3人)までは非課税となります。

現金や不動産をそのまま相続するよりも、生命保険を活用すれば、税負担を軽減することができます。

(2)受取人が速やかに現金を受け取れる

死亡保険金は、保険金請求書類が保険会社に到着してから1週間程度で、速やかに現金で受け取ることができます。

金融機関は、預金口座の名義人が亡くなったことがわかると、直ちに口座を凍結します。

凍結した口座からお金を引き出すには、遺産分割協議書や遺言書などで、誰がその預金を引き継ぐのかを明らかにする必要があり、相当な時間がかかることが予想されます。

すぐに必要となる葬儀費用や遺族の当面の生活資金に備えることができます。

また、相続税は亡くなってから10ヵ月以内に原則として現金で納付しなければならず、納税資金の確保にも役立ちます。

(3)遺産分割トラブルを防げる

死亡保険金は、原則として受取人固有の財産として扱われます。

遺産分割協議の対象外になるため、「特定の人に確実に渡したい」という場合に有効です。

受取人を指定できるので、生前に誰にのこすかを決めることができます。

なお、途中で受取人を変更することもできます。

相続財産のほとんどが分割しにくい不動産である場合、死亡保険金を活用することで遺産分割トラブルを避けることが可能です。

2. 相続対策でおすすめの生命保険タイプ

ここでは3つの商品を取り上げ、それぞれの商品の「特徴」「メリット」「注意点」について解説します。

●一時払終身保険

〈特徴〉

契約時に一括で保険料を支払い、その後は払い込み不要 

〈メリット〉

・健康状態の告知や医師の診断なしで加入できる商品が多く、高齢でも加入しやすい

・保険料を一括で支払うため手元の資金は減るが、保険料以上の死亡保険金を受け取ることができ、相続財産をスムーズに移転することができる

〈向いている人〉

まとまった預貯金を持っており、すぐに相続対策を始めたい人

●低解約返戻金型終身保険

〈特徴〉

一定期間は解約返戻金が少ないが、長期保有で返戻率が高くなる 

〈メリット〉

保険料が割安で、高い死亡保障と解約返戻金が確保できる 

〈向いている人〉

長期的な相続対策や資産形成を考えている人

●外貨建て終身保険

〈特徴〉

外貨で保険料を払い、保険金も外貨建てで受け取る 

〈メリット〉

円建てに比べて運用利率が高く、受取額の増加が期待できる

〈注意点〉

為替リスクがあるため、円安時には有利だが、円高時は不利になることもある

3. 加入時の注意点

生命保険で相続対策を行う際の、加入時の注意点を4つご紹介します。

(1)保険金額の設定

相続税においては、死亡保険金の非課税額(500万円×法定相続人の数)があります。

保険金額を設定する際、この税制上の特典を意識することが税負担を軽減させるカギです。

(2)保険料の一時払と分割払の違い

保険料を一時払にすると、手元の資金が無くなりますが、資産を一括で保険化することができ、相続財産を減らすことができます。

一方、保険料を分割払にすると、手元に資金を残し、費用の負担を長期的に分散できるというメリットがあります。

(3)健康告知・加入年齢制限

相続対策は高齢者になってから行うケースが多いです。

高齢者になると、健康状態や加入年齢制限の問題があり、加入できないことも起こり得ます。

(4)贈与税の課税(契約者・被保険者・受取人の組み合わせ)

契約者と被保険者が同一であれば、受け取る死亡保険金は相続税の課税対象になります。

しかし、契約者=夫、被保険者=妻、死亡保険金受取人=子という契約形態の場合には、受け取る死亡保険金は相続税ではなく、贈与税の課税対象になるので注意しましょう。

贈与税の税率は、相続税より高くなっています。

4. 活用事例

一時払終身保険を活用して、1,500万円の相続対策を行った事例をご紹介します。

〈事例〉

Aさん(75歳)の法定相続人は、妻・長女・長男の3人。

Aさんは、自分の銀行預金の一部で一時払終身保険に加入し、死亡保険金受取人と受取額を妻に750万円、長女に375万円、長男に375万円に設定。 

➡ 現金のままで持っていると全額が相続税の課税対象になります。

  Aさんは相続税の死亡保険金非課税額をフル活用し、相続税の課税対象額を1,500   
  万円減らすことができました。 

  さらに、死亡保険金は請求後1週間ほどで現金で支払われたため、葬儀費用や相
  続税の納税資金確保に役立ちました。

5. まとめ

以上、相続対策に生命保険がおすすめの理由、おすすめの保険タイプ、加入時の注意点などを解説しました。

生命保険は、相続対策において「死亡保険金の非課税額」「現金化の早さ」「遺産分割トラブルの防止」という3つの大きなメリットがあります。 

ただし、契約形態や保険金額の設定を誤ると、贈与税の課税や税負担軽減効果の低下につながるため注意が必要です。 

相続対策で生命保険を活用する場合は、FPや税理士などの専門家と相談しながら進めることをおすすめします。

2025.8.14

 

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生命保険

「おひとりさま」の生命保険 活用のメリットと保険金受取人の注意点

配偶者や子どもなどの法定相続人がいない、いわゆる「おひとりさま」は、自分が亡くなったあとの財産の行き先や手続きについて、特有の不安を抱えがちです。

解決手段のひとつとされているのが、生命保険を活用して「大切な人に確実にお金を届ける」という方法です。

おひとりさまが生命保険を活用するメリットと保険金受取人を指定する際の注意点や対策についてわかりやすく解説します。

おひとりさまの「想いを形にするための手段」のひとつとして、重要なポイントをチェックしてみてください。

1.おひとりさまが生命保険を活用するメリット

生命保険では、被保険者(生命保険の対象として保険がかけられている人)が亡くなると受取人として指定した人に、死亡保険金が直接支払われます。

そのため、次のようなメリットがあります。

●のこしたい人に確実に資金を残せる

●原則として遺産分割協議の対象外であり、保険金請求書類が保険会社に到着後1週間程度で、速やかに現金で受け取れる。

●相続税における死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が適用できる(一定の要件を満たした場合)

特に、おひとりさまは法定相続人がいないため、財産が最終的に国庫に帰属するリスクもあり、生命保険は自分の財産を、自分の意思に沿って引き継いでもらうための有効な手段となります。

2.死亡保険金受取人に指定できる人

死亡保険金受取人の範囲は、一般的には被保険者の配偶者および1親等・2親等の血族(親、子、孫、兄弟姉妹、祖父母)です。

ただし保険会社によっては、3親等内の血族(叔父、叔母、甥、姪など)や、一定の条件を満たす場合に事実婚や同性パートナーを受取人に指定できる場合もあります。

また、死亡保険金受取人は契約時に必ず指定しなければなりませんが、途中で変更することもできます。

3.信頼できる人を受取人にする

おひとりさまが死亡保険金受取人を指定する際には、「信頼できる人」がいるかどうかが大きなポイントになります。

受取人になる人とは生前によく話し合って意思疎通をしておく必要があります。

4.遺言書や信託契約との併用

死亡保険金受取人は、保険会社が指定する範囲内で決めなければなりません。

もし希望する人を死亡保険金受取人にできない場合には、遺言書や信託契約を活用します。

(1)遺言書

遺言書は相続人でない人にも財産をのこすことができますが、作成する際に必ず守らなければならないルールがあり、このルールが守られていない遺言書は無効になります。

代表的な遺言書として「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。

(2)信託契約

信託契約とは、「委託者」が自分の財産を信頼できる「受託者」に託し、「受託者」は「委託者」の意思に沿って、その財産を「受益者」のために管理・運用・処分する契約です。

5.まとめ

人生の最終章を迎えるにあたり、誰に、どのように自分の財産を託すかは大きなテーマです。

おひとりさまだからこそ、「想い」を形にできる手段として、生命保険の活用をぜひ検討してみてください。

2025.8.10

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生命保険

生命保険で資産形成! メリットとデメリットを徹底解説

日経平均株価が40,000円前後を推移し、金利が上がってきたにもかかわらず、思ったように資産形成ができない人が多く、自分にあった資産形成方法を探し求めています。

そのような中、もしもの時の保障と資産形成を同時に準備できるということで注目されている資産形成方法があります。

それは「生命保険」です。

生命保険をうまく活用して資産を築く方法について、種類やメリット・デメリットを交えながらわかりやすく解説しています。

また向いている人・向いていない人についても解説していますので、自分はこれをやるべきなのか、チェックしてみてください。

1. 生命保険と資産形成の関係

生命保険というと「もしもの時に備えるもの」というイメージが強いですが、中には貯蓄機能も併せ持つ商品があります。

保険料の払い込みをしながら、もしもの時の保障と将来のための資産形成を同時に進めることが可能です。

このような保障機能と貯蓄機能の両方を併せ持った生命保険は、まさにハイブリッド型生命保険といえるでしょう。

2. 資産形成に活用できる生命保険の種類

保障だけでなく資産形成の機能も持つ生命保険をご紹介します。

● 終身保険

死亡保障が一生涯続き、解約すれば返戻金が受け取れるため、老後資金準備や相続対策として活用することができます。

● 養老保険

一定の保障期間の後、満期時には満期保険金が支払われるため、満期を迎えると貯蓄と同じ効果があります。

● 学資保険

子どもの教育資金を計画的に積み立てることを目的とする保険で、もしもの時の保障を確保しながら、満期金を入学金などに活用することができます。

● 変額保険

保険料の一部を投資信託で運用し、運用実績によっては大きなリターンが期待できますが、逆に元本割れのリスクもあります。

保障額については最低保証があります。

● 外貨建て保険

保険料が外貨で運用される保険で、為替変動などを利用して資産形成を目指します。

円建て保険とは異なるリターンが期待できますが、為替リスクに注意が必要です。

3. 生命保険で資産形成するメリット

生命保険を活用して資産形成を行う場合のメリットを3つご紹介します。

(1)強制的に貯蓄ができる

生命保険の保険料は月払いや年払いとすることが多く、毎月または毎年、指定の口座から引き落としが行われます。

家計の資金繰りが厳しい時にはつらいものがありますが、指定口座から毎月または毎年、保険料の支払いが継続的に行われ積み立てられるため、強制的な貯蓄が行われます。

(2)保障と資産形成を両立できる

生命保険本来の、もしもの時の備えをしながら、資産も増やせます。

ひとつの保険商品で、保障と貯蓄を両立させることができるので、見直しを行う際の管理が楽になります。

(3)税制面での優遇がある

生命保険には、生命保険料控除(所得控除)や相続税における生命保険金の非課税額などの税制面での優遇をうけることができます。

4. 生命保険で資産形成するデメリット

生命保険を活用して資産形成を行う場合にはメリットだけでなく、デメリットもあるので確認しておきましょう。

(1)保険料が高額になりやすい

たとえば養老保険は、保障と貯蓄がセットになった商品なので、その分保険料が高くなっています。

ひとつの保険商品で保障機能と貯蓄機能を兼ね備えているため合理的ですが、月々の保険料の負担が家計を圧迫することも考えられます。

(2)中途解約で元本割れのリスク

貯蓄機能があるので、中途解約した場合でも解約返戻金を受け取ることができます。

ただし、契約してから短期間で解約すると、解約返戻金が支払った保険料総額よりも少なくなり、元本割れすることがあります。

(3)運用リスクに注意

変額保険や外貨建て保険は、運用実績によりリターンが期待できる反面、市場の動向によっては損失が出る可能性があります。

運用リスクには十分注意して、自分のリスク許容度を踏まえた選択が必要です。

5. 生命保険での資産形成に向いている人・向いていない人

保障機能と貯蓄機能の両方を併せ持つハイブリッド型生命保険は、すべての人におすすめできるかというと、そうではありません。

ハイブリッド型生命保険が、向いている人、向いていない人について解説します。

(1)向いている人

① 計画的に長期で資産を形成したい

保険料を毎月または毎年コツコツと継続的に積み立てていくため、長期的な視点で資産形成をしたい人に向いています。

契約後短期間で解約してしまうと、解約返戻金が払い込んだ保険料総額を下回り、元本割れを起こすことがあります。

変額保険や外貨建て保険では、長期的視点での資産形成を目指していれば、損失を上回るリターンによって資産を増やすことが可能です。

② 保障も一緒に確保したい

保障と貯蓄をまとめてひとつの保険商品で管理したいという人にも向いています。

保障と貯蓄についての見直しを同時に行えるので合理的です。

③ 他の投資商品に抵抗がある

資産形成のための金融商品を探しても納得できるものがない場合には、貯蓄機能を併せ持った生命保険を選択するという方法も考えられます。

「生命保険は保障のためのもの」という概念を見直すことで、新たな資産形成手段が発見できるかもしれません。

(2)向いていない人

① 短期で大きなリターンを狙いたい

生命保険を活用した資産形成は、保険料を継続的に積み立てていくという仕組みであるため、短期的な視点で大きなリターンを狙いたいという人には向いていません。

② 柔軟にお金を使いたい

生命保険は契約の途中において、一部解約をすることができますが、これを繰り返すと損失が発生します。

貯蓄した資産を柔軟に引き出して使いたいのであれば、他の金融商品を利用した方が良いです。

③ 投資信託やNISAの方が良い

投資信託やNISAでは、運用実績によっては大きなリターンが期待できますが、元本の保証はありません。

生命保険では大きなリターンは期待できませんが、保障についての最低保証があります。

リスク許容度から判断して、自分には投資信託やNISAの方が良い、と判断できる人は生命保険による資産形成は向いていないといえます。

6. 他の資産形成手段との比較

生命保険は「守りの資産形成」といわれることがあります。

一方で、NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)は、運用益を狙う「攻めの資産形成」といえるでしょう。

生命保険は保障と長期積立を両立させる保守的な選択肢です。

このことから、生命保険は資産形成を行うための金融商品の組み合わせにおいて、「バランスを取る存在」とも考えられます。

7. まとめ

以上、生命保険を活用した資産形成について解説しました。

生命保険には、保障機能と貯蓄機能の両方を併せ持つハイブリッド型生命保険があります。

ただし、すべての人に最適というわけではありません。

自分に向いているのか、いないのか、メリット・デメリットをしっかり見極めながら判断することが大切です。

2025.8.8