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相続

【相続対策事例18】成年後見制度を利用したが、財産が自由に使えなかった

〈状況〉

Nさん(78歳)は認知症と診断され、医師のすすめにより成年後見制度を利用することにしました。

成年後見制度とは、認知症などにより判断能力が衰えた人や知的障がいのある人などの財産を管理し、契約など法的な面から日常生活を守る制度です。

成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。

法定後見制度は、すでに判断能力が不十分な人のための制度です。

一方で任意後見制度は、まだ判断能力のあるうちに、将来に判断能力が衰えたときに備えて、自分を守ってもらう契約を結んでおく制度です。

任意後見制度は、「誰に、どのようなことを頼むか」という内容を前もって決めておいて、実際に判断能力が不十分になったときに、契約がスタートします。

Nさんの場合は、すでに判断能力が不十分であると診断されていたため、法定後見制度を利用することになりました。

成年後見制度では一般的に、守る立場の人を「後見人」といい、守られる立場の人を「被後見人」といいます。

なお、法定後見制度では、被後見人の判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の3つの分類があります。

後見人は被後見人の利益を守ることが最優先となります。

Nさんの場合

・孫への教育資金援助

・相続税対策のための生前贈与

・アパート建築

・資産運用

などが認められませんでした。

〈問題点〉

●柔軟な相続対策ができない

●資産活用が制限される

法定後見制度では、後見人に「代理権」「同意見」「取消権」などの権限が与えられています。

後見人の立場が「後見」「保佐」「補助」のいずれに該当するかによって、後見人の権限が代理なのか同意なのか、また代理や同意によってできる範囲が異なります。

また、法定後見制度は家庭裁判所の審判によって利用するため、家庭裁判所への申立費用と後見人に対する報酬の支払いが生じます。

〈対策〉

✅ 家族信託

✅ 任意後見契約

✅ 遺言書

認知症になる前に、例えばこれらを組み合わせて準備しておくことで、多くの問題を回避することができたと考えられます。

認知症対策は介護だけでなく、「相続対策」としても重要です。

認知症になると、本人の財産であっても自由に管理・処分できなくなるケースがあります。

その結果、預金の払い戻し、不動産の売却、生前贈与、遺言書の作成などが難しくなり、家族が思わぬ負担を抱えることも少なくありません。

だからこそ、判断能力が十分にあるうちに準備を始めることが大切です。

家族信託、任意後見契約、遺言書、生命保険などを適切に組み合わせることで、将来の不安を大きく軽減できます。

相続対策は「亡くなる前の対策」だけではありません。

「認知症になる前の対策」でもあることを、ぜひ覚えておいていただきたいと思います。

〈注〉
この記事は2026年8月時点の情報にもとづき作成しており、成年後見制度については、2028年頃の実施を目指して、さらに利用しやすくなるような改正が行われることが確定しています。

 現行制度改正後
利用期間被後見人が亡くなるまで必要な期間だけ
報酬の支払い一生涯(毎月)必要な期間だけ
後見人一度決まれば交代は困難最適な人に交代可
本人の意思後見人が代行して決める後見人が支える

2026.8.21.