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80歳以上でもできる!生命保険を使った相続対策

80歳を超えると「もう生命保険は関係ない」と思われがちですが、実は相続対策の観点ではまだまだ活用できる余地があります。

特に、生命保険は相続税における非課税の特典を利用できたり、死亡保険金が受取人固有の財産として遺産分割のトラブルを避けやすかったりと、高齢期にこそ有効なポイントがあるのです。

「80歳以上でも可能な生命保険活用による相続対策」について、メリット・デメリット・具体的な活用法をていねいに解説しますので、ぜひ活用してください。

●80歳以上でも加入できる生命保険はあるの?

一般的に生命保険は、70〜80歳前後で新規に加入できる年齢の上限を迎える商品が多いです。

ですが、80歳以上でも加入できる商品は確かに存在し、たとえば次のようなものがあります。

・一時払終身保険

まとまった資金を一度に預け入れることで、一生涯の死亡保障を確保できる

さらに掛け捨てではないので貯蓄性(解約返戻金)がある

・少額短期保険

葬儀費用などをカバーすることを目的として、割安な保険料で少額の死亡保障を確保できる(高齢者専用プランもあり)

医療保険や長期の定期保険は難しいですが、「相続対策目的の死亡保障」であれば、80歳以上でも加入できる生命保険があります。

●相続対策に生命保険を活用するメリット

相続対策において生命保険だけが持っているメリットを紹介します。

・非課税の特典

相続税では、死亡保険金のうち「500万円 × 法定相続人の数」までの金額は非課税という特典があります。

この特典を適用するためには契約形態の要件を満たす必要がありますが、要件を満たせば、もちろん80歳以上でも適用することができます。

そのまま現預金で持っていると全額が相続税の対象になってしまいます。

生命保険に加入することで相続税対策に役立ちます。

・死亡保険金は受取人固有の財産

死亡保険金は受取人固有の財産とされているので、原則として遺産分割協議の対象外です。

そのため死亡保険金受取人として指定すれば、特定の相続人に確実に資金を渡すことができます。

死亡保険金受取人は契約の途中で変更することもでき、渡す保険金の額も変更することができるので、相続争いを避ける効果が期待できます。

・速やかに現金を確保

相続財産に不動産や株式が多いと分割することが難しく、かといって簡単に売却することもできません。

相続財産に現預金が少ないと遺産分割がなかなか決着しません。

死亡保険金は、請求書類が保険会社に到着してから1週間程度で現金で支払われます。

受取人が速やかに現金を手にすることができるので、葬儀費用の支払い、遺族の生活資金、そして相続税の納税資金を確保することができます。

●80歳以上での生命保険加入の注意点

メリットだけではなく、注意点についても確認しておきましょう。

・保険料が高額

生命保険の保険料は年齢が高くなるほど高額になります。

80歳以上であれば保険料はかなり高額です。

そのため解約してもお金が戻ってこない掛け捨て型の商品に加入するのは現実的でなく、貯蓄性(解約返戻金)のある一時払型が基本になります。

・健康状態による制限

80歳以上になると持病がある人も多く、健康告知や医師の診査が必要な場合、状況によっては加入が難しいことがあります。

また加入できたとしても、割増保険料をとられたり、保険金の支払いに条件を付けられたりすることもあります。

なお、一時払型の商品であれば、健康告知や医師の診査が不要のものがあります。

持病を抱えていて健康状態に不安のある人は、一時払型の商品を検討するとよいでしょう。

・商品リスク

最近人気のある外貨建て商品や変額商品は、運用リスクや為替リスクなどがあるため注意が必要です。

運用実績によっては、元本割れなど大きなリスクを被る可能性があります。

外貨建て商品や変額商品は、基本的には長期で運用を行うものであり、長期の運用期間によってリスクの回避を行います。

80歳以上の人が長期運用をすることは適切ではなく、シンプルな円建ての一時払終身保険が安心です。

●活用法の具体例

80歳以上の人にとって、生命保険はどのように活用できるのか見てみましょう。

・相続税納税資金を確保

一時払終身保険に加入する。

保険料を一括で支払うことによって相続財産を移転させ、相続税の負担を軽減し、保険金(現金)を相続人へ確実に渡して、相続税納税資金を確保する。

一時払終身保険では、健康告知や医師の診査がない商品も多く、持病があっても加入することができる。

・特定の相続人へ確実に資金を渡す

死亡保険金は受取人固有の財産であり、原則として遺産分割協議の対象外となるため、特定の相続人に確実に資金を渡すことができる。

たとえば、自分の介護を担ってくれた長女に保険金を渡すことで公平感を持たせることができる。

・自分の葬儀費用を確保

保険料が安い少額短期保険を利用して、自分の葬儀費用をカバーする。

自分の葬儀費用は自分で準備することで、自分が亡くなったあとの遺族の負担を軽減することができる。

●他の相続対策との比較

生命保険では「現金を速やかに受け取れる」ということが特に注目すべき点です。

生命保険以外の相続対策である生前贈与と遺言書と比較してみましょう。

・生前贈与

生前贈与は、相続対策の王道と言われています。

生前贈与を行うと贈与税がかかってくるのですが、贈与税には年間110万円までの非課税額があります。

これにより1年間に110万円までは、贈与税を課税されずに現金などを贈与することができます。

この非課税額を活用して、多くの財産を生前贈与するとなると、かなりの時間がかかります。

そのため長期間に渡って計画的に実行する必要があります。

なお、最終的には相続税で精算されますが、年間110万円を除いた累計2,500万円まで非課税で贈与することができる相続時精算課税制度を活用する方法もあります。

・遺言書

遺言書は生前に自分の意思を遺すことができるため、円満な遺産分割には欠かせない存在です。

遺産の分割方法を指定することはできますが、相続する財産によっては、現金化するまでに手間がかかる場合もあるので注意が必要です。

代表的な遺言書として、公正証書遺言と自筆証書遺言があります。

公証役場で法律にくわしい公証人が作成するため、手間や費用がかかりますが、公正証書遺言の方がよく利用されています。

自筆証書遺言は、すぐに自分ひとりで作成することができ、あまり費用もかからないという長所がある反面、形式不備により無効になったり、紛失や偽造、廃棄のおそれがあります。

また、家庭裁判所での検認が必要です。

このような短所を無くすために「自筆証書遺言保管制度」が設けられ、自筆証書遺言を利用する人も増えてきました。

●まとめ

以上、80歳以上でも可能な生命保険活用による相続対策について解説しました。

80歳以上であっても、生命保険を活用した相続対策はまだまだ可能です。

特に一時払終身保険や少額短期保険を活用すれば、相続税における非課税の特典を有効活用し、遺族の生活資金や相続税納税資金を確保できるのが魅力です。

ただし、加入できる商品や条件は限られるため、検討する際は専門家(FP・税理士など)に相談し、自分や家族の状況に合った方法を選ぶことが重要です。

2025.9.12