相続対策として生命保険を活用するメリットのひとつに「死亡保険金の非課税の特典」があります。
これは現預金や不動産にはない生命保険独特のもので、相続税の負担を軽減するうえで非常に効果があります。
●死亡保険金の非課税の特典とは
相続税法では、受け取った死亡保険金のうち、「500万円 × 法定相続人の数」までの金額は、相続税の課税対象になりません。
なお、相続税の課税対象にならないのは、他の保険商品すべての死亡保険金と合算して、「500万円 × 法定相続人の数」までの金額です。
●民法では、死亡保険金は本来の相続財産ではないが、相続税法では「みなし相続財産」
少し難しい話になりすみません。
民法では、死亡保険金は本来の相続財産ではありません。
死亡保険金は受取人固有の財産となり、原則として遺産分割協議の対象外です。
ただし相続税法では、受け取った死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。
なお、相続放棄をしても死亡保険金を受け取ることができます。
受け取ることはできますが、「みなし相続財産」として相続税が課税されます。
この際、死亡保険金の非課税の特典は適用できないので注意が必要です。
●死亡保険金の非課税の特典を受けるための要件
死亡保険金の非課税の特典は、契約者と被保険者が同一で、かつ死亡保険金受取人が相続人である保険契約に限り適用することができます。
もし契約者と被保険者が同一で、死亡保険金受取人が相続人以外であった場合にはどうなるのでしょうか?
相続ではなく遺贈として相続税が課税されますが、死亡保険金の非課税の特典を適用することはできません。
死亡保険金の非課税の特典を受けるためには契約形態に注意が必要です。
●デメリットや注意点
・保険料が高額のため負担が重い(相続対策は高齢になってから始める人が多い)
・健康状態によっては、生命保険に加入できないこともある(相続対策は高齢になってから始める人が多い)
・契約者と被保険者が同一であっても、死亡保険金受取人が「相続人以外」であると非課税の特典が使えない
・非課税額の計算における「法定相続人の数」には、相続放棄した人も含めることに注意
(ただし、相続放棄をした人が受け取った死亡保険金には非課税の特典は適用できない)
●活用例
法定相続人が妻・長女・長男の3人であれば 、受け取った死亡保険金のうち1,500万円(500万円×3人)までが非課税となります。
法定相続人が3人で、死亡保険金を3,000万円受け取ったケースで考えてみましょう。
非課税額:500万円 × 3人 = 1,500万円
相続税の課税対象額:3,000万円 - 1,500万円 = 1,500万円
このように500万円の非課税額を使うことで、相続税の課税対象額を半分に減らせるのです。
もうひとつ、一時払終身保険に保険金額1,500万円で加入したケースで考えてみましょう。
70歳以上で一時払終身保険に加入した場合の保険料は、保険金額の1,500万円を少し下回る金額です。
もし現預金で1,500万円保有していれば、全額が相続税の課税対象になります。
一時払終身保険に加入することで、相続財産を1,500万円減らして、非課税の特典を生かしながら、相続人に資産を継承することができます。
特に相続税がギリギリでかかる場合には有効な手段となります。
なお、相続税の課税対象にならないのは、他の保険商品すべての死亡保険金と合算して、「500万円 × 法定相続人の数」までの金額であることには注意しましょう。
2025.8.28