「相続税がかかりそうだけれど、預金のまま残すと税負担が重くなるのでは?」
そんな不安を持つ人に活用されているのが 一括払い生命保険(=一時払終身保険) です。
まとまった資金を一度に払い込み、一生涯の保障を確保できる仕組みで、相続対策・相続税対策・資産承継 の手段として人気があります。
一括払い生命保険(=一時払終身保険)の仕組み、メリット、デメリット・注意点をくわしく解説します。
相続対策のひとつの手段としてお役立てください。
1.一括払い生命保険の仕組み
「一括払い生命保険(=一時払終身保険)」は、契約時に保険料を一括で支払い、以後の払い込みは不要です。
保障は一生涯続き、被保険者が亡くなったときに、死亡保険金が指定した受取人へ、直接すみやかに支払われます。
また、解約返戻金が期間の経過に応じて増加していくという貯蓄機能もあります。
預金としてそのまま残すよりも スムーズな資産移転と相続税軽減効果が期待できます。
2.相続対策としてのメリット
一括払い生命保険を相続対策に活用するメリットを4つ紹介します。
(1)死亡保険金の非課税の特典がある
相続税法では、受け取った死亡保険金のうち、「500万円×法定相続人の数」までの金額が非課税という特典があります。
たとえば、法定相続人が3人なら1,500万円(500万円×3人)まで非課税です。
預金のまま残すより、相続財産を圧縮できるため、相続税の負担を軽減することができます。
(2)死亡保険金受取人を指定できる
死亡保険金は受取人固有の財産となるため、原則として遺産分割協議の対象外です。
そのため、死亡保険金受取人に指定すれば、特定の相続人に確実に資金を渡すことができます。
(3)口座凍結を回避し、早期に資金が確保できる
金融機関は、預金口座の名義人が亡くなったことがわかると、直ちに口座を凍結します。
凍結した口座からお金を引き出すには、遺産分割協議書や遺言書などで、誰がその預金を引き継ぐのかを明らかにする必要があり、相当な時間がかかることが予想されます。
死亡保険金は、請求書類が保険会社に到着してから、通常1週間程度で現金で受け取れるため、葬儀費用の支払いや遺族の当面の生活費の確保に役立ちます。
(4)貯蓄効果も期待できる
払い込んだ保険料以上の死亡保険金を受け取ることができ、また解約返戻金も期間の経過に応じて増加していくので、資産形成と相続対策を両立することができます。
3.デメリット・注意点
一括払い生命保険を相続対策に活用するメリットとあわせて、デメリット・注意点についても把握しておく必要があります。
●保険料を一括で支払うためのまとまった資金が必要(最低数百万円〜)
●契約後短期間のうちに解約すると 解約返戻金が保険料を下回る(元本割れとなる)
●死亡保険金受取人を一部の相続人だけにすると 遺産分割協議で不公平感が出る可能性がある
●健康状態によっては、加入できない場合がある
4.一括払い生命保険が向いている人
どのような人が一括払い生命保険に向いているのか?
相続対策における一括払い生命保険のメリット、デメリット・注意点を踏まえて、ピックアップしてみました。
●相続財産を移転させて、相続税の負担を軽減したい人
●相続財産の評価額を相続税の基礎控除額以下に引き下げて、相続税が課税されないようにしたい人
●老後資金を考慮しても余裕のある資金を保有しており、相続対策として活用したい人
●特定の相続人に確実に資金を渡したい人
5.他の相続対策との比較
それぞれのメリット・デメリットを整理してみました。
対策方法 | メリット | デメリット |
一括払い生命保険 | 資金移転がスムーズ 非課税の特典あり | 資金拘束 |
預金 | 流動性が高い | 全額が相続税の課税対象 口座凍結リスク |
生前贈与 | 毎年110万円まで非課税 | 長期的な計画が必要 |
不動産活用 | 相続税評価額を下げやすい | 流動性が低く維持費も必要 |
6.まとめ
以上、相続対策で注目される「一括払い生命保険」について、仕組み、メリット、デメリット・注意点について解説しました。
一括払い生命保険(=一時払終身保険)は相続対策のための有効な選択肢ですが、メリットだけでなく、デメリット・注意点についてもしっかりと理解しておく必要があります。
生命保険が他の金融商品に比べて「相続に強い」商品であることを理解していただけたと思います。
2025.8.27