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生命保険

生命保険を相続対策に活用する際のデメリットや注意点

相続対策として「生命保険」は広く利用されています。

死亡保険金には 「500万円×法定相続人の数」までの非課税額の特典があり、しかも請求後速やかに現金で受け取れるため、遺産分割の手段や相続税の納税資金の確保として有効です。

しかし、メリットの裏にはデメリットや注意点もあります。

生命保険を相続対策に活用する際のデメリットや注意点を整理しました。

理解を深めていただき、トラブルや損失を防いでください。

1.おさえておいていただきたいデメリットや注意点

デメリットや注意点として考えられるものが5つあります。

具体的に見ていきましょう。

(1)保険料負担の重さ

一般的に相続対策を考え始めるのは70代以降になってからが多いです。

高齢者になって生命保険に加入すると、保険料が高額になります。

特に一時払終身保険の場合、保険料を一括して支払う必要があるため、手元の資金が一度に大きく減少します。

無理な保険料負担は、老後の生活資金を圧迫しかねません。

相続対策と老後資金は、バランスをよく考えて実行する必要があります。

(2)元本割れのリスク

終身保険は、一生涯の保障を得ながら、解約返戻金も増加していく、保障と貯蓄を兼ね備えた相続対策の代表的な商品です。

ただし、契約後数年間は解約返戻金が保険料を下回ります。

つまり元本割れするリスクがあるということです。

相続対策目的で生命保険に加入しても、途中で資金が必要になることは十分に考えられます。

その場合、解約返戻金を充当するということになるのですが、元本割れリスクがあり、解約を繰り返すことで大きな損失につながる可能性もあります。

生命保険を相続対策に活用する場合には、老後資金の資金繰りにも着目しながら実行することが大切です。

(3) 受取人指定によるリスク

死亡保険金は「受取人固有の財産」となりますので、原則として遺産分割協議の対象外です。

そのため死亡保険金受取人を指定して、特定の相続人に確実のお金を渡すことができます。

ただし、特定の相続人だけに保険金を渡すと、他の相続人に「不公平だ」と感じさせ、相続トラブルの火種になることが考えられます。

相続財産の内容を良く分析して、不動産など分割しにくい財産が多い場合には、相続トラブルを起こさないように、保険金の受取人や受取額をうまく調整する必要があります。

(4) 死亡保険金非課税額の限界

相続税における、死亡保険金の非課税額(500万円×法定相続人の数)は有効ですが、それを超える死亡保険金は課税対象となることに注意が必要です。

死亡保険金の非課税額は、他の保険商品すべての死亡保険金と合算して、(500万円×法定相続人の数)までの金額が非課税となります。

受取った死亡保険金の総額が大きい場合、十分な税負担軽減効果を得られません。

また、死亡保険金の非課税額は、契約者と被保険者が同一で、死亡保険金受取人が相続人である契約に限り適用できるということにも注意が必要です。

(5) 契約形態を誤ると課税リスクが増大

生命保険では、契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって、課税される税の種類が異なります。

・契約者=被保険者:夫 受取人:相続人 → 相続税(死亡保険金非課税額あり)

・契約者=被保険者:夫 受取人:相続人以外 → 相続税(死亡保険金非課税なし)

・契約者=子、被保険者=父、受取人=子 → 所得税(一時所得)・住民性

・契約者=父、被保険者=母、受取人=子 → 贈与税

贈与税は相続税よりも税負担が重くなります。

このように契約形態によっては、本来より不利な税金がかかる可能性があるため、契約時には保険にくわしいFPや税理士などの専門家に確認が必須です。

2.実際によくある失敗例

これらはみな、事前にデメリットを理解していれば回避できたケースです。

〈ケース1〉

相続税の負担を減らす対策として相続財産を移換するために、一時払終身保険に加入し、高額な保険料をまとめて支払った。

数年後、脳梗塞を患い、多額の医療費が必要となった。

一時払終身保険の保険料を支払ったことにより、手元の資金が少なくなってしまった。

医療費の支払いにあてるために一時払終身保険を解約したが、契約後数年しか経っていなかったため、元本割れとなってしまった。

〈ケース2〉

相続人は、長女、長男、二男の子ども3人。

二男を死亡保険金受取人に指定して保険金を渡し、長女と長男には他の財産を分けてもらうようにした。

実際に相続が起きて、相続財産は不動産など分割しにくい財産がほとんどであることが判明し、遺産分割がうまくできず揉めた。

〈ケース3〉

生命保険から受け取る死亡保険金は相続税の対象だと思っていたが、相続税の申告納税をした後、税務署から相続税ではなく、贈与税の課税対象となる旨の指摘を受けた。

税務署に確認すると、契約者:父 被保険者:母 死亡保険金受取人:子という契約形態では、相続税ではなく、贈与税の課税対象になると回答があった。

相続税の申告は税理士に委託していたが、その税理士も誤った判断をしていた。

3.デメリットを回避するためのポイント

生命保険を相続対策に活用する場合には、以下の点に注意しましょう。

●相続税対策のことを優先したために、保険料負担が老後生活を圧迫しないよう設計する

●死亡保険金受取人の指定は公平性に配慮する

●受け取った死亡保険金に対する税の種類を間違わないために、契約形態について保険にくわしいFPや税理士などの専門家に確認しておく

●生命保険だけに頼らず、遺言、生前贈与、信託などもあわせて活用する

4.まとめ

以上、生命保険を相続対策に活用する際のデメリットや注意点について解説しました。

生命保険は相続対策において有効な手段ですが、デメリットやリスクも無視できません。

「保険料負担」「元本割れ」「不公平感」「課税リスク」といった注意点を理解した上で活用することが大切です。

相続は家庭ごとに事情が異なります。

生命保険を相続対策に活用する場合は、必ず保険にくわしいFPや税理士などの専門家に相談し、自分に合った方法を選びましょう。

2025.8.25