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生命保険

二次相続対策に有効な生命保険活用法

相続対策というと「一次相続」での税負担軽減ばかりに目が向きがちですが、実は本当に注意すべきは「二次相続」です。

一次相続では「配偶者の税額軽減の特例」により相続税の負担を大きく減らせるものの、その特例は二次相続では使えません。

そのため、「二次相続での税負担が想定以上に重くなる」というケースが少なくありません。そこで有効な対策のひとつが「生命保険」の活用です。

二次相続対策における生命保険の役割と具体的な活用方法について解説します。

最後まで読んでいただければ、二次相続対策の打ち手が見つかります。

●二次相続の基本

相続は、最初に亡くなった配偶者の財産を引き継ぐ「一次相続」と、その後もう一方の配偶者が亡くなったときに発生する「二次相続」に分けて考える必要があります。

一次相続では「配偶者の税額軽減の特例」により、配偶者が多くの財産を相続しても、相続税は大幅に軽減されます。

しかし、二次相続ではこの特例を使うことができず、さらに相続人の数も減るため、基礎控除額も小さくなります。

その結果、一次相続よりも二次相続の方が相続税の負担が大きくなるケースが多いのです。

●二次相続で生命保険が役に立つ理由

生命保険は、二次相続のリスクに備えるために非常に有効な手段です。

その理由として次のことがあげられます。

死亡保険金の非課税の特典がある

相続税の計算において、受け取った死亡保険金のうち、「500万円 × 法定相続人の数」までの金額には相続税がかからないという特典があります。

この特例は一次相続だけでなく、二次相続でも適用することができます。

現預金で持っていれば全額が相続税の対象になります。

たとえば一時払終身保険に加入して、まとまった現預金を生命保険にすれば、相続財産である現預金を減らすことができます。

そして受け取る死亡保険金には非課税の特典が適用されるため、税負担の軽減につながります(所定の要件あり)。

相続税の納税資金を確保できる

死亡保険金は、請求後1週間程度で速やかに現金で支払われます。

相続財産のほとんどが不動産ということがあります。

不増産は簡単に売却することができず、また現預金が少ないという場合であっても、受け取った死亡保険金で相続税納税資金を確保することができます。

死亡保険金受取人に指定すれば、特定の相続人に確実に資金を渡すことができる

死亡保険金は受取人固有の財産であり、原則として遺産分割協議の対象外となります。

そのため、死亡保険金受取人を子ども世代に指定すれば、子ども世代に確実に資金を渡せます。

これにより二次相続まで含めた対策を行うことができます。

また、公平な遺産分割や代償分割にも活用することができます。

遺産分割手段として有効である

不動産など分割しにくい資産を相続する場合、遺産分割がなかなかまとまらないことが多いです。

そこで死亡保険金を活用し、受取人や受取額を調整することで、遺産分割の一助になるのも大きなメリットです。

なお、死亡保険金受取人や受取額は、契約の途中で変更することもできます。

●二次相続対策における生命保険の活用方法

二次相続を見据えた生命保険活用には、いくつかのポイントがあります。

このうち代表的なものを紹介します。

死亡保険金受取人を子どもに設定する

通常、一次相続では配偶者を死亡保険金受取人にすることが多いです。

しかし、二次相続まで考慮すると、子どもを死亡保険金受取人に指定するのが有効です。

なぜなら、配偶者には税額軽減の特例があり、配偶者が取得した財産のうち、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のうち、いずれか多い金額までは相続税がかからないからです。

この特例は、かなりの税負担軽減効果がありますが、二次相続では、使うことができません。

一次相続では、二次相続も考慮して、死亡保険金受取人を決めることが大切です。

一時払終身保険の活用

相続対策には一時払終身保険を活用することが多いです。

まとまった資金を一時払で終身保険に組み替えることにより、相続財産を減らし、一生涯の保障を確保しながら、資産を死亡保険金として相続人に渡すことができるからです。

ただし、まとまった資金が手元からなくなるので、老後生活資金を考慮して実行の判断をする必要があります。

シミュレーションの重要性

一次相続と二次相続について、それぞれどのくらいの相続税がかかるのかをシミュレーションしてみることが大切です。

一次相続では配偶者の税額軽減の特例が使えますが、二次相続では使えません。

さらに、二次相続では一次相続よりも相続人の数が減るため基礎控除額が減少します。

二次相続の方が税負担が厳しくなることが予想されます。

そのため、二次相続までふまえて、誰に、どれだけの財産を相続させるのが適策なのかを十分に検討する必要があります。

シミュレーションにあたっては、FPや税理士などの専門家の力を借りるとよいでしょう。

兄弟姉妹間の公平性確保

二次相続では親がいないため、子どもたちだけで遺産分割をまとめなければなりません。

親の財産を円満に遺産分割ができるように、兄弟姉妹間で公平性を確保する必要があります。

生命保険を活用すれば、長男が自宅を相続する代わりに、二男には死亡保険金を渡すなど、兄弟間の公平性を保つことができます。

兄弟姉妹が多い場合には、死亡保険金の受取額を調整することで、公平性を保つための一助となります。

●注意点・デメリット

生命保険を使った二次相続対策には注意点・デメリットがあります。

確認しておきましょう。

・高齢になってからの生命保険の加入は保険料が高額になる

・死亡保険金受取人を孫にすると贈与税がかかるリスクがある

・保険金額が過大であると資産圧縮効果が薄れる

・商品によってコストや保障内容が異なるため、慎重な選択が必要

●まとめ

以上、二次相続対策における生命保険の役割と具体的な活用方法について解説しました。

二次相続では、一次相続で使えた特例が使えなくなるなど、相続税の負担が重くなるケースが多いため、事前の対策が欠かせません。

生命保険は「死亡保険金の非課税の特典」「公平な遺産分割」「相続税納税資金の確保」に役立つ強力なツールです。

一次相続だけで安心せず、二次相続まで見据えて専門家(FPや税理士など)に相談し、最適な生命保険の活用を検討しましょう。

2025.9.22

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生命保険

相続対策に効く!贈与と生命保険を組み合わせた活用法

相続対策を考える際、多くの人が「生前贈与」や「生命保険」の活用を検討します。

実は、この2つを組み合わせることで、相続税の負担を抑えつつスムーズに財産を承継できる可能性が広がるのです。

「相続対策における、贈与と生命保険を組み合わせた活用法」についてやさしく解説しました。

最後まで読んでいただければ、相続対策のお役に立てる内容です。

●相続対策における贈与の基本

贈与とは、贈与者と受贈者の間で、「あげる」「もらう」という契約を締結して、物などが無償で移転することです。

贈与のうち、贈与者が生きているうちに、家族などの受贈者に財産を継承するのが「生前贈与」です。

生前贈与は相続対策の王道といわれています。

なぜなら、生きているうちに財産の一部を家族などに贈与して、相続財産を減らしておけば、相続税がかからなくなるか、負担を軽減することができるからです。

生前贈与で非課税となる方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税制度」の2種類があります。

暦年課税

年間110万円までの基礎控除があります。

毎年コツコツと贈与することで相続財産を計画的に減らすことができ、相続税の負担を軽減することができます。

ただし、贈与契約書を作成しなければならないなど、贈与として認められるための対応が必要です。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度では、最終的には相続税で精算されますが、贈与税の課税対象となる財産のうち、年間110万円の基礎控除を除いた累計2,500万円まで贈与税がかかりません(2,500万円を超えた分には20%の贈与税がかかります)。

なお、この制度を一度選択すると暦年課税に戻すことはできませんので注意が必要です。

●贈与と生命保険の組み合わせ方

贈与と生命保険をうまく組み合わせることで、より効果的な相続対策が可能になります。

たとえば次のような流れになります。

  1. 親が子どもに資金を贈与する
  2. その資金を使って、子ども(契約者・保険料負担者)が親(被保険者)の生命保険に加入する
  3. 親の死亡時に子どもが保険金を受け取る

この場合の契約形態は、契約者=子ども、被保険者=親、死亡保険金受取人=子どもとなり、子どもが受け取った死亡保険金には一時所得として所得税・住民税が課税されます。

相続税の非課税の特典(500万円×法定相続人の数)は適用することはできません。

なお、課税される一時所得の金額は次のように計算します。

課税される金額=(死亡保険金-支払った保険料-特別控除額50万円)÷2

たとえば、一時払終身保険に加入した場合、高齢者であれば死亡保険金と支払った保険料との差額が少なく、さらに特別控除額50万円を控除すれば、課税される金額がゼロになることが十分に考えられます。

まとまった資金の贈与により相続財産を大きく減らすことができ、子どもは死亡保険金を受け取ることで資産を継承し、また相続税の納税資金を確保することができます。

●贈与×生命保険のメリット

相続対策として、贈与と生命保険を組み合わせて活用するメリットについてまとめてみました。

・相続財産を減らしつつ、将来の保障を準備できる

・死亡保険金に一時所得の課税の特典を活用できる

・死亡保険金受取人を指定できるため「争族」防止に有効

・速やかに現金化できるため、遺族の生活資金や相続税の納税資金を確保できる

●注意点・デメリット

メリットと合わせて注意点やデメリットについても確認しておきましょう。

・契約形態を誤ると「贈与税」「相続税」の二重課税になるリスクがある

・健康状態によっては生命保険の加入が難しいことがある(加入できても保険料が割増になったり、保険金支払いに条件が付くことがある)

・保険料を一括で支払う場合、多額の資金が必要となり、手元の資金がなくなる恐れがある

・保険料贈与においては、贈与事実の心証が得られないと、税務署から贈与を否認される恐れがある

・相続人への贈与では、相続税の計算において、贈与した財産が相続財産に持ち戻されるので注意が必要

●まとめ

以上、「相続対策における、贈与と生命保険を組み合わせた活用法」について解説しました。

贈与と生命保険は、それぞれ単独でも相続対策として有効ですが、2つを組み合わせることでより大きな効果を発揮します。

ただし、契約形態や課税関係の理解を誤ると、逆に税負担が増える恐れもあります。

実行にあたっては、必ず専門家(FPや税理士など)に相談しながら最適なプランを検討することが大切です。

2025.9.17

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生命保険

80歳以上でもできる!生命保険を使った相続対策

80歳を超えると「もう生命保険は関係ない」と思われがちですが、実は相続対策の観点ではまだまだ活用できる余地があります。

特に、生命保険は相続税における非課税の特典を利用できたり、死亡保険金が受取人固有の財産として遺産分割のトラブルを避けやすかったりと、高齢期にこそ有効なポイントがあるのです。

「80歳以上でも可能な生命保険活用による相続対策」について、メリット・デメリット・具体的な活用法をていねいに解説しますので、ぜひ活用してください。

●80歳以上でも加入できる生命保険はあるの?

一般的に生命保険は、70〜80歳前後で新規に加入できる年齢の上限を迎える商品が多いです。

ですが、80歳以上でも加入できる商品は確かに存在し、たとえば次のようなものがあります。

・一時払終身保険

まとまった資金を一度に預け入れることで、一生涯の死亡保障を確保できる

さらに掛け捨てではないので貯蓄性(解約返戻金)がある

・少額短期保険

葬儀費用などをカバーすることを目的として、割安な保険料で少額の死亡保障を確保できる(高齢者専用プランもあり)

医療保険や長期の定期保険は難しいですが、「相続対策目的の死亡保障」であれば、80歳以上でも加入できる生命保険があります。

●相続対策に生命保険を活用するメリット

相続対策において生命保険だけが持っているメリットを紹介します。

・非課税の特典

相続税では、死亡保険金のうち「500万円 × 法定相続人の数」までの金額は非課税という特典があります。

この特典を適用するためには契約形態の要件を満たす必要がありますが、要件を満たせば、もちろん80歳以上でも適用することができます。

そのまま現預金で持っていると全額が相続税の対象になってしまいます。

生命保険に加入することで相続税対策に役立ちます。

・死亡保険金は受取人固有の財産

死亡保険金は受取人固有の財産とされているので、原則として遺産分割協議の対象外です。

そのため死亡保険金受取人として指定すれば、特定の相続人に確実に資金を渡すことができます。

死亡保険金受取人は契約の途中で変更することもでき、渡す保険金の額も変更することができるので、相続争いを避ける効果が期待できます。

・速やかに現金を確保

相続財産に不動産や株式が多いと分割することが難しく、かといって簡単に売却することもできません。

相続財産に現預金が少ないと遺産分割がなかなか決着しません。

死亡保険金は、請求書類が保険会社に到着してから1週間程度で現金で支払われます。

受取人が速やかに現金を手にすることができるので、葬儀費用の支払い、遺族の生活資金、そして相続税の納税資金を確保することができます。

●80歳以上での生命保険加入の注意点

メリットだけではなく、注意点についても確認しておきましょう。

・保険料が高額

生命保険の保険料は年齢が高くなるほど高額になります。

80歳以上であれば保険料はかなり高額です。

そのため解約してもお金が戻ってこない掛け捨て型の商品に加入するのは現実的でなく、貯蓄性(解約返戻金)のある一時払型が基本になります。

・健康状態による制限

80歳以上になると持病がある人も多く、健康告知や医師の診査が必要な場合、状況によっては加入が難しいことがあります。

また加入できたとしても、割増保険料をとられたり、保険金の支払いに条件を付けられたりすることもあります。

なお、一時払型の商品であれば、健康告知や医師の診査が不要のものがあります。

持病を抱えていて健康状態に不安のある人は、一時払型の商品を検討するとよいでしょう。

・商品リスク

最近人気のある外貨建て商品や変額商品は、運用リスクや為替リスクなどがあるため注意が必要です。

運用実績によっては、元本割れなど大きなリスクを被る可能性があります。

外貨建て商品や変額商品は、基本的には長期で運用を行うものであり、長期の運用期間によってリスクの回避を行います。

80歳以上の人が長期運用をすることは適切ではなく、シンプルな円建ての一時払終身保険が安心です。

●活用法の具体例

80歳以上の人にとって、生命保険はどのように活用できるのか見てみましょう。

・相続税納税資金を確保

一時払終身保険に加入する。

保険料を一括で支払うことによって相続財産を移転させ、相続税の負担を軽減し、保険金(現金)を相続人へ確実に渡して、相続税納税資金を確保する。

一時払終身保険では、健康告知や医師の診査がない商品も多く、持病があっても加入することができる。

・特定の相続人へ確実に資金を渡す

死亡保険金は受取人固有の財産であり、原則として遺産分割協議の対象外となるため、特定の相続人に確実に資金を渡すことができる。

たとえば、自分の介護を担ってくれた長女に保険金を渡すことで公平感を持たせることができる。

・自分の葬儀費用を確保

保険料が安い少額短期保険を利用して、自分の葬儀費用をカバーする。

自分の葬儀費用は自分で準備することで、自分が亡くなったあとの遺族の負担を軽減することができる。

●他の相続対策との比較

生命保険では「現金を速やかに受け取れる」ということが特に注目すべき点です。

生命保険以外の相続対策である生前贈与と遺言書と比較してみましょう。

・生前贈与

生前贈与は、相続対策の王道と言われています。

生前贈与を行うと贈与税がかかってくるのですが、贈与税には年間110万円までの非課税額があります。

これにより1年間に110万円までは、贈与税を課税されずに現金などを贈与することができます。

この非課税額を活用して、多くの財産を生前贈与するとなると、かなりの時間がかかります。

そのため長期間に渡って計画的に実行する必要があります。

なお、最終的には相続税で精算されますが、年間110万円を除いた累計2,500万円まで非課税で贈与することができる相続時精算課税制度を活用する方法もあります。

・遺言書

遺言書は生前に自分の意思を遺すことができるため、円満な遺産分割には欠かせない存在です。

遺産の分割方法を指定することはできますが、相続する財産によっては、現金化するまでに手間がかかる場合もあるので注意が必要です。

代表的な遺言書として、公正証書遺言と自筆証書遺言があります。

公証役場で法律にくわしい公証人が作成するため、手間や費用がかかりますが、公正証書遺言の方がよく利用されています。

自筆証書遺言は、すぐに自分ひとりで作成することができ、あまり費用もかからないという長所がある反面、形式不備により無効になったり、紛失や偽造、廃棄のおそれがあります。

また、家庭裁判所での検認が必要です。

このような短所を無くすために「自筆証書遺言保管制度」が設けられ、自筆証書遺言を利用する人も増えてきました。

●まとめ

以上、80歳以上でも可能な生命保険活用による相続対策について解説しました。

80歳以上であっても、生命保険を活用した相続対策はまだまだ可能です。

特に一時払終身保険や少額短期保険を活用すれば、相続税における非課税の特典を有効活用し、遺族の生活資金や相続税納税資金を確保できるのが魅力です。

ただし、加入できる商品や条件は限られるため、検討する際は専門家(FP・税理士など)に相談し、自分や家族の状況に合った方法を選ぶことが重要です。

2025.9.12

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生命保険

外貨建て生命保険を相続対策に活用するメリットと注意点

円建てよりも運用利率が高いため、外貨建てによる運用が人気です。

生命保険にも保険料を外貨で支払って運用する外貨建て商品があります。

生命保険は相続対策に強い金融商品ですが、メリットがある一方で、デメリットや注意しなければならないこともあります。

外貨建て生命保険を相続対策に活用する際の、他の商品との比較、活用のポイントまで含めて解説しました。

ご自身の相続対策に外貨建て生命保険は有効なのか、確認してみてください。

●外貨建て生命保険とは?

外貨建て生命保険とは、米ドルや豪ドルなどの外貨で保険料を払い込み、解約返戻金や死亡保険金も外貨で受け取るタイプの生命保険です。

円建て保険に比べて運用利率が高いため、長期運用により、資金や保障の増加を期待できます。

ただし、運用リスクのほかに、円建て保険にはない「為替変動」の影響を受けるという点に注意が必要です。

●相続対策としてのメリット

外貨建て生命保険は相続対策に有効活用することができます。

・死亡保険金の非課税の特典が使える

要件を満たせば、相続人が受け取る死亡保険金のうち「500万円 × 法定相続人の数」までの金額が非課税となります。

これにより、外貨建てによる運用で増加した資金を、効率的に相続財産に組み込むことが可能です。

・資産を増やしながら相続の準備ができる

円建てよりも高い利率で運用できるため、長期的には資産形成効果が期待できます。

預金で保有するよりも有利に資産を残せる可能性があります。

・遺産分割や納税資金準備に役立つ

死亡保険金は受取人を指定できるため、残したい特定の相続人に、確実に資金を渡すことができます。

また、相続税の納税資金を準備するのにも役立ちます。

●デメリットと注意点

一方で、外貨建て生命保険にはリスクや注意点もあります。

・為替変動リスク

円高局面では受け取れる金額が目減りする可能性があります。

たとえば、1ドル=140円のときに契約した保険が、相続時に1ドル=120円になれば、同じドル建て金額でも円換算額は減少します。

・解約時の元本割れリスク

外貨建て保険は、契約後に早期解約すると、解約返戻金が払込保険料を下回ることが多く、

元本割れリスクがあります。

短期での運用効果をねらっている人には向いていません。

・相続税は円換算

相続税の計算は、外貨建てであっても「円換算」で行われます。

相続発生時点の為替レートにより計算されるため、課税額が変動することに注意が必要です。

・換金コストや手続き

死亡保険金を外貨のまま受け取った場合、相続人にとっては外貨を円に換える手間や為替手数料が発生します。

●他の商品との比較

外貨建て生命保険との違いを把握しておきましょう。

・円建て生命保険との違い

円建て生命保険は、為替リスクがなく安全性が高いですが、運用利率が外貨建て生命保険に比べて低く抑えられています。

外貨建て生命保険は、円建て生命保険よりも運用利率が高いため、資産運用効果が期待できる反面、円建て生命保険にはない為替変動リスクを抱えています。

・外貨預金や投資信託との違い

保険には死亡保障の最低保証があり、「死亡保障+運用」がセットになっている点が最大の違いです。

・不動産との違い

不動産は流動性がなく分割が難しい資産ですが、生命保険は死亡保険金を速やかに現金で受け取れるため、流動性が高く、分割も容易です。

●活用のポイント

外貨建て生命保険を相続対策で活用する際は、次の点を意識しましょう。

・相続財産の規模や相続人の数に応じて適切な保険金額を設定する

・為替変動リスクを理解し、長期的な運用を前提とする

・保険料を一時払するか積立払するかをライフプランに合わせて選ぶ

・相続税シミュレーションを行い、専門家(FP・税理士など)のアドバイスを受ける

●まとめ

外貨建て生命保険は「保障(死亡保障の最低保証あり)+資産運用」を兼ね備えた商品です。

高い運用利率により、円建て生命保険よりも資金の増加が期待できます。

相続対策として活用すれば、非課税の特典を受けたり、遺産分割や納税資金準備に役立ちます。

ただし、為替変動リスクや元本割れリスクをしっかりと理解したうえで、専門家と相談しながら実行することが成功のカギとなります。

2025.9.2