「相続放棄をしたら、生命保険金も受け取れないのでは?」
結論から言うと、受け取ることが可能です。
なぜなら、生命保険金は法律上「受取人固有の財産」とされ、相続財産には含まれないからです。
ただし、おさえておかなければならない重要な注意点もあります。
生命保険金と相続放棄の関係をやさしく解説します。
●相続放棄とは?
相続放棄とは、亡くなった人(被相続人)の財産・債務を一切引き継がないという法的手続きです。
家庭裁判所に申述することで成立し、相続放棄をした人は、最初から相続人でなかったものとみなされます。
・手続き期限:相続開始を知った日から3か月以内
・効力:プラスの財産もマイナスの財産(借金など)も受け継がない
財産の相続を「一部だけ放棄する」といった選択はできません。
では、生命保険金はどうなるのでしょうか。
●生命保険金は「受取人固有の財産」
生命保険契約は、「契約者」「被保険者」「保険金受取人」で構成されています。
このうち、保険金受取人が明確に指定されている場合、その保険金は受取人固有の財産とみなされ、相続財産とは切り離されます。
そのため原則として遺産分割協議の対象外となります。
●相続放棄をしても生命保険金は受け取れる
以下の条件を満たせば、相続放棄しても生命保険金を受け取ることができます。
・保険金受取人が特定の人物(妻・長男など)として明記されている
・保険料を被相続人(亡くなった方)が負担していた
・保険金受取人が契約上、保険金を受け取る権利を持っている
この場合、生命保険金は「死亡によって保険金受取人に直接帰属する財産」となります。
つまり、相続放棄しても生命保険金の受け取りが認められるのです。
FPとして現場でよく見るのは、「契約者(保険料負担者)・被保険者=夫、保険金受取人=妻」というケースです。
この場合、妻が相続放棄をしても、生命保険金は相続財産にはならないため、受け取ることができます。
●「法的な取扱い」と「税務上の取扱い」を分けて考える必要がある
相続放棄をしても生命保険金を受け取ることができるのですが、「法的な取扱い」と「税務上の取扱い」が異なることに注意が必要です。
多くの人がよく誤解をしてしまう重要なポイントなので、しっかりとおさえてください。
民法上では、生命保険金は「本来の相続財産」ではなく、「受取人固有の財産」となるため、相続放棄をしても受け取ることができます。
ただし、受け取った生命保険金は、相続税法上は「みなし相続財産」となり、相続税の課税対象となります。
なお、生命保険金には非課税の特典があります。
この特典を適用すれば、受け取った生命保険金のうち「500万円×法定相続人の数」までの金額は非課税となります。
相続放棄をして生命保険金を受け取ると、非課税の特典はあるものの、相続税の課税対象になるということに注意しましょう。
●FPが伝えたい実務上のポイント
・「相続放棄=生命保険金も放棄」とはならない
・生命保険の契約時には保険金受取人の指定方法を確認する
・生命保険金は、相続税法上「みなし相続財産」として課税対象になる(非課税額あり:500万円×法定相続人の数)
FPとして特に強調したいのは、「法的な取扱い」と「税務上の取扱い」は異なるということです。
受け取れるからといって、課税されないとは限りません。
ここを整理しておくと、相続後のトラブルを防ぐことができます。
●まとめ
以上、相続放棄と生命保険金について、重要な注意点と合わせて解説しました。
生命保険金は、相続放棄をしても受け取ることができます。
ただし、税務上は「みなし相続財産」となるため、相続税が課税される可能性があることに注意が必要です。
2025.10.9